【Q.K】愛されたなんて嘘だ (ページ29)

今日:20 hit、昨日:9 hit、合計:15,418 hit

歩み続けるは仲間の元へページ29

親の顔を見るのが嫌で、電話をかける。
親に電話をすること自体、もう何年ぶりだろうか。そんな気持ちと、早く事を終わらせたい気持ちが混じっていて、少し焦っていた。
電話に出る音がする。
「もしもし、お母様。」
「珍しいじゃない、自分からかけるなんて」
驚きより冷たさの方が勝っていた彼女の声に、気持ち悪さを感じる。
「それでね、こないだ考え直せって言ってたことなんだけど」

「辞めてくれるのよね？」
少し、期待するような、昔の優しく褒めてくれる母親に聞こえた。

「…やっぱりどれだけ反対されたって私は自分の意見を尊重し、進み続ける。そう決めたんだ。」そういった瞬間に、私を否定する怒号が耳を痛くする。

「その方向は間違ってるのよ！」
「考え直せ」
期待外れ、その言葉が彼らにとって今の私なのだろう。それでも関係ない。やりたいことをやらせてくれるのが、親としてもいいんじゃないかなって思う。

「今の私には、間違ってたら正しい方向へと導いてくれる人がいる。私の意見を尊重しつつね。」

「…ねえお母様、お父様。二人は私を認めてくれたことがある？」

「もちろんあるじゃない」
その母の発言に続けて父もそうだ、と言う。
「俺らはそれでやりたいことをやらせてあげたじゃないか」

それは虚言じゃない？そう思い、口に出そうになる。
オブラートに包まねば、話が進まないとその言葉を飲み込んだ。

でもそれは、
「私の才能しか、認めてないでしょう」

『…』
結局、沈黙にしかならなかった。
だからさよならを告げて家族の連絡先も、消した。辿られないように。
これでやっと、前の私をすべて捨てられた気がした。