【Q.K】愛されたなんて嘘だ (ページ26)

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心残りも辛さも知らないふりをしてページ26

邪魔な家族とも縁を切り、これで晴れて自由だと思った。
しかし、何故かぽつんとしている。

…なんだろう。

デスクに向かい、画面を見つめる。

「手、止まってるけど何か考え事？」
私の画面を覗き込んでくる。
「い、いや、何でも…」
誰かと思えば福良くんだった。

「いやどう見てもおかしいな、どうしたの」
笑いながら福良くんは訊く。
一旦外に出ようか、そんなことを提案してくれて私も気分転換がてらに彼について行く。
自販機で缶コーヒーを押し、がらん、と出てきたものを差し出してきた。
「ありがとう」と受け取ると、笑顔で「どういたしまして」と返ってくる。

ああ、そうだ。彼にぐらいなら言えるのかな。

「福良くんはさ、何かこう…ああ！分かんない！」
ゆったりと落ち着いて話そうとしたつもりなのに、まとまらずに少し声を張ってしまった。
珍しい私に彼は目を丸くして、そして笑う。
「あははは」
辛かったことなんて全て吹っ飛びそうな、彼の笑う顔。

「笑わないでよ」
苦笑する自分。胸がいっぱいになっているような感じがする。苦しいものじゃなかった。
真剣に聞いてくれたり、笑ってくれたり。そばにいてくれることの有難さは彼から教わった。自分で決めることの大切さも、何もかも、彼から教わった。

なにも恩返しできてない。

「ごめんごめん」
てか、笑いすぎでしょ。

「自分の人生の中で大きな決断をするとき、不安になるじゃない？」

「あ…まあ、そうだね」
「でも、今を楽しんで後悔とか考えない方がいいんじゃないかなって僕は思う。
その時その時の自分にとって、最善の選択をする。それが多分一番良い、普通なのかも。」

「…そっか、ありがとうね。流石、私と付き合いの長い奴～。」
しれっとグータッチを交わす。
「その言い方直した方がいいと僕は思うんだけどなあ」
彼は苦笑するけど、私はこれじゃなきゃね。
「うるさいやい」

「…結局、詳しくは言えないや」
うっかり、口に出てしまった。

「何か言った？」
「ううん、なんでもない。」
「また何か隠してない？」
「ホント何もないってばー」
そうやってすかさず誤魔化す。

ホント、何もなければ幸せなんだろう。