序章 ページ1
「今コンクールの優勝は__
音宮さんです。」
会場に拍手が響き渡り、
無駄に眩しく光るスポットライトが私を照りつける。
飽きるほど聞いたこの拍手。
こんなもの、私にとって何の心にも届かない冷淡なものだ。
「あんたはさぞかし良い気分でしょうね。才能に恵まれて全日本コンクール7連続優勝なんて。」
彼女はいつも私に話しかけてくる。
底辺だってお母様が言ってた。
「いいえ。これほどこの結果を出してれば飽きるものよ。」
とっととプロから降りて自由に生きたい。そんな願いがポロッと口に出た。
「あんたね…!」
彼女は私の言い方が気にくわなかったらしく、怒っているみたいだった。
「その態度、クラシックに相応しくないよ」
冷静で、情熱的な音楽を奏でてこそプロだとお父様が言っていた。
ああも乱暴な子なんて、この界隈に来るべきじゃないのにな。
そう言っていた。
「くっ…」
「私は分からないの。
勝つことの意味が見出だせない。
だって私は
貴女の音楽の方がずっと素敵だと思うのに、
世間は底辺と見下すでしょう?
私なんて嘘ばっかり。
貴女は正直者なのよ。
__偽るなんて、面倒だよね。」
でも世の中偽らなきゃ生きていけないから。
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作者名:光希 | 作成日時:2021年4月14日 16時