・ ページ24
「……ほんと、ごめん。」
お母さんが担当医に呼び出され二人きりになると、まーくんは重たい口を開いて、そう言った。
「俺、交通事故に遭ったことしか知らされてなくて。ここにいるの、怪我したからだと思ってた。」
まーくんが悲しそうな顔をして俯く。
「酷い事、言っちゃったよな。“知らない人”だなんて。」
「大丈夫ですよ！気にしてませんから。」
そう嘘で繕った言葉と明るさで笑顔を見せる。
だけど、
「ねぇ、君って俺の親友？」
「……え？」
「大切な人、なんでしょ？」
背筋が凍った。
私、彼女だよ？
嘘で固めた笑顔も崩れかけて、涙が溢れそうになった。
だけど、真剣な顔をしているまーくんにそんな事言えなくて。
「……ぁ、そう、そう。親友！」
「だよね？改めて宜しく。」
また、嘘で自分を繕った。
「何でこーんなとこでまーくんの天然、出ちゃうかなー！」
A棟の屋上。段々と曇ってきた空に思いっきり叫んだ。
そう、何でこんなとこで。
普通、大切な人って言ったら彼女とか妻とかそっちを考えるでしょ。
ベンチに横たわって空を見上げる。
少し、肌寒くなってきた。
何だかまーくん、少し変わったような気がする。
笑顔が、無くなった。
事故前はもっと笑ってたのに。今日はずっと悲しそうだった。
「あっ、いたいた。Aちゃんここにいたのね。」
後ろから声が聞こえて、振り向く。
「お母さん。」
パタパタとコンクリートを叩きつけるスリッパの音が響く。
私に駆け寄るお母さんの足取りは、軽い。
「雅紀の、退院が決まったわ。」
「えっ……。」
まさかこんな早く。
退院が決まるなんて。
「先生から話があるみたいだから、来て。」
「はい。」
少し、というか結構。胸のざわめきが落ち着かなくて、心配だった。
夢が現実になりそうで怖くなった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 23人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
璃架(プロフ) - 二宮ねずみ♪さん» 有り難うございます！頑張ります (2015年4月30日 22時) (
レス) id: 8d4d91492f (このIDを非表示/違反報告)
二宮ねずみ♪ - 凄く面白いです！がんばってください！ (2015年4月30日 22時) (レス) id: 2afa05b9b0 (このIDを非表示/違反報告)
ユウヒ@あーりゅ - 名前を変えました、前回はユウヒという名前でコメントしていました。もし出来れば、また更新してください。待ってます！ (2014年5月11日 19時) (レス) id: 5d4313dc5a (このIDを非表示/違反報告)
璃架(プロフ) - ユウヒさん» そんな！どうも、ご丁寧なコメントありがとうございます<(_ _)>よろしければまたお願いします♪ (2014年5月3日 21時) (レス) id: e6a4b46d97 (このIDを非表示/違反報告)
ユウヒ - 作品を読ませていただきました。とても面白くて、場の雰囲気や様子がしっかりと書かれていたので楽しむことができました！ (2014年5月1日 21時) (レス) id: 50c9b5c756 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：璃架 | 作成日時：2013年7月24日 23時
