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数日後。ライブ本番当日。
リハーサルを済ませたA含む【運営】一同は、自分たちの出番が来るのを待っていた。
事前に【運営】のSNSで、本日のライブについて霊の出演不可といった趣旨の告知はしてある。
それに対する反響はやはり、彼の演奏を期待していたファンの悲しみのメッセージで溢れていた。
書き込みを見たAは言わずもがな自信をなくし、意気消沈といった感じであった。それを青斗や恭に励まされ、今この瞬間、Aはステージに立つために存在している。
控室で緊張を噛みしめる。爪が食い込むのもお構いなしに、拳を強く握り込む。
本当に大丈夫なのだろうか。臨時とはいえ、一時的に【運営】の一員となってしまうのだ。
あと数分もすれば出番は回ってくる。本日の出演バンドは大物揃いで、この界隈では有名な名がいくつも並んでいる。考えれば考えるほど不安が募り、胃がキリキリと傷んだ。
今突然この場に霊がやってきて、出番を変わってくれないだろうかと淡い期待を抱く。
すると、椅子に深く腰掛けそんな妄想をしていたAに、声がかかった。
「だいじょーぶやでA。短期間でお前は俺たちの音楽を完全に理解したんや。なんら問題あらへん」
「そうだよ、俺3人で初めてスタジオ練したときびっくりしたんだから。
Aはみどりくんに負けてない。自身持って!」
青斗にポンポンと頭を撫でられる。それにどことなく安心感を抱いたAは、『ありがとう』と感謝の音を漏らした。
「【運営】のみなさん、バックでスタンバイお願いしまーす」
「はーい」
そうしていると、あっという間に出番が回ってきたらしい。スタッフの声がかかった。
意を決して、その場から立ち上がる。
震える両足は、まるで自分の足ではないように感じた。
「A、行こうか」
『…うん』
深呼吸しながら、控室を出た。
「ね、いつもの円陣やろ」
「ええで」
『えっえ?』
“いつもの”という聞き慣れない単語に慌て、自分よりずっと背の高い2人に交互に視線をやった。Aの慌てように気がつくと、青斗は「あ、えっとね」と言いながら自身の腕をAの肩に回した。
すると恭も、それに合わせて腕を回す。
その様を理解したAも、双方の肩へと腕を伸ばすが、身長差のせいかいまいち上手く肩が組めない。
そんなAをみた2人は、途端にフッと笑い出した。なぜだか、それに釣られるようにしてAも笑みが溢れる。
きっと、緊張を和らげてくれたのだろうと思った。
そして、
「ライブ、楽しむぞ!」
「「おー!!」」
『お、おー!!』
Aの人生初ライブが、幕を開ける。
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緑川(プロフ) - ぴとあさん» コメントありがとうございます!!そのように評価していただけてとても嬉しいです;; 体調を崩されてらっしゃるのですね、お大事になさって下さい。当方の作品で少しでも元気になっていただければと思います! 励みになります、今後ともどうぞよろしくお願いします。 (1月2日 21時) (レス) id: 581670bd91 (このIDを非表示/違反報告)
ぴとあ - 好きです…!評価の星の右側を何百万回押したいぐらい!最近寒いので体調に気をつけて頑張ってください。(僕は今発熱なう)応援してます!あと夢主の勉強嫌いめっちゃ共感 (12月31日 15時) (レス) @page46 id: dda73027c9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:緑川林檎 | 作成日時:2023年8月5日 5時