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だが青斗は、それらを踏まえてAに頼み込んでいた。
「Aしかいないんだ!俺らとよく一緒に弾いてきたのも、運営の持ち曲熟知してるのも、
…みどりくんの唯一の教え子なのも、Aだから」
「今すぐ代理のギター担当探すのはだいぶ難しい。それに、見つかったとしても俺らと音合わせられる確実性は低い。この短期間だしね。でもAなら…」
『無理だよ!!無理!!!…ぜったい、できないよ…っ』
それ以上聞きたくないという風に、掴まれていた手を振り払って両耳を塞ぐ。
その場にしゃがみこんで弱音を吐いた。
「…なんで?」
『だって、だって知ってるでしょ?!私がバンド組みたいってずっと思ってるのに組めてない理由!他人の目が怖いんだよ…っ!!!
バンド活動はしてみたい。でもどうあがいたって、ステージに立って他人からの視線を浴びながらの演奏は避けられない。それに、私みたいな臆病なやつに、バンドメンバー…なんて…』
絶対に親しくなれない。それは昔からだった。
Aは人付き合いが苦手で、友達が作れない。ゆえに友達と呼べる存在は霊と恭のみ。
青斗に紹介されていなければ、中学が同じだった霊とすらも友達になんてなれていなかったことだろう。
今にも泣き出してしまいそうだった。どうしてか、この話題になると涙が出そうになってしまう。
すると、青斗の手がAの俯く頭に伸びる。
暖かく、優しい感触。心を落ち着かせてくれるような温度が触れた。
「大丈夫、Aならできる」
『なんで、言い切れる、の…?』
「だって…」
頭を撫でていた手がAの頬へと移動する。
俯いていた顔を無理やり上げさせられ、ふたりの視線が交差した。
そして青斗は、ひどく優しい声色で、笑いかける。
「俺がいるじゃん」
「言ったでしょ、俺のこと頼れって」
あぁ、どうして彼の目を見ると、こんなに心臓が煩く鳴るのだろうか。
Aは小さくうなずき、彼の頼みを承諾した。
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緑川(プロフ) - ぴとあさん» コメントありがとうございます!!そのように評価していただけてとても嬉しいです;; 体調を崩されてらっしゃるのですね、お大事になさって下さい。当方の作品で少しでも元気になっていただければと思います! 励みになります、今後ともどうぞよろしくお願いします。 (1月2日 21時) (レス) id: 581670bd91 (このIDを非表示/違反報告)
ぴとあ - 好きです…!評価の星の右側を何百万回押したいぐらい!最近寒いので体調に気をつけて頑張ってください。(僕は今発熱なう)応援してます!あと夢主の勉強嫌いめっちゃ共感 (12月31日 15時) (レス) @page46 id: dda73027c9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:緑川林檎 | 作成日時:2023年8月5日 5時