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1-2)臨時ギタリストの本気。 ページ7

翌朝。Aはデジタル時計に表示された日付を見つめ、いつもどおり早めに起床してしまったことを後悔した。休日は流石のAもゆっくりしたい。
しかし二度寝をする気にもなれず自室を出て台所へと向かった。コップに一杯の水を汲みながら、昨晩の出来事を思い返す。


通話が途切れたあのあと、呆然とする私を青斗は力強く抱きしめた。
そして彼の腕の中、通話の内情を説明した。彼らは黙って聞き終わった後、「今日はもう休もう」と言い解散した。おそらくAのことを気遣ってのことだったのだろう。

霊の伝言を伝えたとき、おそらく青斗は悲しい表情をしていた。抱きしめられた状態でその様子が伺えなくとも、わずかに変わったその力加減で気づいた。


“俺の代理ぐらい務まるでしょ”


あのときの霊のセリフが頭から離れない。何を思って彼は、そんなことを言ったのだろうか。
【運営】も、青斗のことも、霊は誰よりも愛していた。俺にとって大切な存在なんだと、Aとギターを弾くときによく語っていた。


『みどりくん…なんで…』



彼の心情は、誰にも読み取れなかった。



***



「A、頼みがある」


日が暮れた頃、風呂からでてきた青斗は突然真剣な眼差しでAを呼び止めた。
濡れた髪が彼の色っぽさを妙に引き立てており、少々目のやり場に困る。生活を共にして何年も立つが、Aは未だに慣れていない。

青斗の言葉に軽くうなずき承諾すると、彼の自室へと誘導された。


バタンっと扉が閉まってから、しばらくの沈黙。自分から話があると呼び止めた青斗だったが、なにかと葛藤するように押し黙っていた。
そんな珍しい姿を不審に感じ、Aは彼の俯く背に手を伸ばす。

すると、勢いよくこちらに振り向く。
予想外のその行動に驚き、伸ばした手を戻そうとする。
が、その手首を掴まれてしまった。


『え、あ…』

「A、お願い。次のライブの臨時でいい。ギターパート引き受けて欲しい」



『……は?!』


その頼みは、あまりにも予想外の言葉だった。


『ま、待って待って。臨時って言っても…私バンドなんて組んだことないから2人と音合わせられるかどうか…
っていうか、私なんかにあのみどりくんの穴埋めなんて務まらないよ!みどりくんのみたいな力量なんて、私には…っ』


動揺して早口に否定の言い訳を並べる。

Aのその反応は無理もない。霊のギターの才能はピカイチなのだ。
それがどれほどかと言うと、【館】の看板ギタリスト呼称され、この界隈ではネット上でそれなりに名を馳せる程だ。【運営】のライブを見に来るファンも、大半が彼目当てだったりする。

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作品ジャンル:恋愛
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緑川(プロフ) - ぴとあさん» コメントありがとうございます!!そのように評価していただけてとても嬉しいです;; 体調を崩されてらっしゃるのですね、お大事になさって下さい。当方の作品で少しでも元気になっていただければと思います! 励みになります、今後ともどうぞよろしくお願いします。 (1月2日 21時) (レス) id: 581670bd91 (このIDを非表示/違反報告)
ぴとあ - 好きです…!評価の星の右側を何百万回押したいぐらい!最近寒いので体調に気をつけて頑張ってください。(僕は今発熱なう)応援してます!あと夢主の勉強嫌いめっちゃ共感 (12月31日 15時) (レス) @page46 id: dda73027c9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:緑川林檎 | 作成日時:2023年8月5日 5時

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