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もしも、このまま運営の活動がよくない方向に進んで行くことになってしまったら、という不安で胸がいっぱいだった。
『ご、ごめん、急に偉そうなこと言った……ぇあ、ちょ、ちょっと?!』
すると突然、青斗がAをぎゅっと抱きしめた。
体格差ゆえに簡単に青斗の胸の中に収まってしまう。背に回された手の温度や、微かに聞こえてくる心音を意識して、一気に顔に熱が集まる。
「んふふ、ありがとA。お前にそこまで心配かけてたなんて…」
『やっ、だ、だからぁ…!こっ、こーゆーこと、突然してくんなって言ってるじゃん!!』
彼の胸に両手を押し当て突き飛ばす。優しい力で包容されていたために、簡単に引きはがすことができた。
「ほんっとすぐ照れるよねぇ、可愛い」
『〜〜〜っ、うるさい!』
青斗はAを溺愛している。それは義妹として、家族としてだと、Aも十分理解している。
しかし、思春期の少女と少年。実際は血縁関係などないうえ、元は普通の幼馴染。少々過激なスキンシップは、Aの心臓が持たない。
それを理解してもなお、青斗はしょっちゅうこうしてAに接している。
『…らだおのばか』
「ごめんって〜」
「お前そうやって話逸らし続けとったら、ホンマにどりみーおらんくなるぞ」
やれやれといった具合に仲裁に入る恭は、青斗の頭を軽く小突く。
いでっと言いながら顔を上げた青斗は、彼にしては珍しく、曇った表情を浮かべていた。
先の恭の言葉も含め、不安が更に加速したAは、意を決して告げる。
『みどりくんと、何があったの』
***
2人の話を要約すると、喧嘩とやらの内情はこうだ。
スタジオで合わせの練習をしていた際、いつものように上手く3人の音が合わなかった。
これでは埒が明かないからと、一度休憩しようと恭が声を上げた。するとすぐに、霊はこの原因は青斗にあると非難した。
確かにその日、青斗は悲しくなるような出来事があり少々その感情が音に出ていた。それは事実であったから、認めざるを得なかった。
しかしそれ以上に、青斗も恭もその日は霊の音に違和感を覚えていた。
いつも聞いている仲間の音だから、その違和感は確かなもの。しかし2人は、それを本人に言い出すことを躊躇っていた。
だが、調子の悪さを認め失笑する青斗に、霊は突然怒鳴った。
いつもであれば仕方ないなと少し煽って、励まして、それだけだったのだが。どうやらその日の霊は機嫌が悪かったらしい。
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緑川(プロフ) - ぴとあさん» コメントありがとうございます!!そのように評価していただけてとても嬉しいです;; 体調を崩されてらっしゃるのですね、お大事になさって下さい。当方の作品で少しでも元気になっていただければと思います! 励みになります、今後ともどうぞよろしくお願いします。 (1月2日 21時) (レス) id: 581670bd91 (このIDを非表示/違反報告)
ぴとあ - 好きです…!評価の星の右側を何百万回押したいぐらい!最近寒いので体調に気をつけて頑張ってください。(僕は今発熱なう)応援してます!あと夢主の勉強嫌いめっちゃ共感 (12月31日 15時) (レス) @page46 id: dda73027c9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:緑川林檎 | 作成日時:2023年8月5日 5時