２-１）されど数センチ。 ページ39
《夏津樹side》
もしなにか１つだけ魔法を使えたら、人はどんな力を欲しがるだろうか。掌から炎を放つ力？触れただけで物体の姿形を作り変える力？他人の思考を読み取る力？
否、現代社会においてそれらのような能力など、欲しがるのはおそらく非現実を夢に見る中二病の子供だけだろう。
きっと本当に能力を授かりたいと欲するなら、この世界で自身が有利に生き延びる為のすべなのだ。この世でいちばん大切なものは金か、愛か、なんて愚問を耳にしたことはあるだろうか。その愚問に対する答えが、前述した問いの答えにそれとなく似るのではないかと俺は思っている。
何が言いたいかというと、もし今魔法を授かることができたなら、俺は迷わず愛の方を選択するという話だ。もっと具体的に言えば、好意を寄せている人間の心情心理が読み取れる魔法、そんなものが欲しい。
「……情けな」
放課後の教室。俺はそんなくだらないことを考えていた。
訳のわからぬ夢物語に思い耽る。この頃、俺はずっとこんな調子だ。
言わずもがな、その原因は隣の席の友人にある訳で。しかしそれは彼女に非があるのではなく、俺にある訳で。
この気持ちを少しでもマシにする方法があればなあと頭を抱えるのは、この１週間で一体何度目だろうか。
すると教室の扉がゆっくりと開かれる音が聞こえた。ガララと申し訳なさそうに音を立てながら、待ち人は教室へ帰って来た。右手には白い用紙と筆記用具が握られている。
『あ…おっお待たせ、しました………』
「お疲れ様です、どうでした？小テスト」
数学の授業中に行われた小テスト。勉強が得意ではないと言う彼女は、その腕試しにおいて思わしくない成績だったそうで。放課後に実施された再試を言い渡されていたうちの1人だった。
『…………数回解き直した末呆れられて釈放されました』
「………」
明後日の方向を見つめる彼女は、早口でそうぼやいた。つまり、再試の合格ラインに達したので戻ってきた、という訳ではないらしい。
『…ご、ごめんなさい……他のっ生徒は、とっくに戻って来てました、よね……それなのに、私だけ……』
彼女が戻って来たこの時、終礼が終わってから約1時間ほど経過していた。だからそのように謝罪する理由もわからなくもない。
しかし今日こうやって彼女を待っていたのは、俺の意思であり、彼女の都合で遅くなってしまったことになんも責任もない。
「そんな気にしないでください！そもそも俺が勉強教えたいって言い出したんですから…」
選んで紡いだ言葉は、彼女の心にどれくらい響いているだろうか。
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緑川(プロフ) - ぴとあさん» コメントありがとうございます!!そのように評価していただけてとても嬉しいです；； 体調を崩されてらっしゃるのですね、お大事になさって下さい。当方の作品で少しでも元気になっていただければと思います！ 励みになります、今後ともどうぞよろしくお願いします。 (1月2日 21時) (
レス) id: 581670bd91 (このIDを非表示/違反報告)
ぴとあ - 好きです…！評価の星の右側を何百万回押したいぐらい！最近寒いので体調に気をつけて頑張ってください。（僕は今発熱なう）応援してます！あと夢主の勉強嫌いめっちゃ共感 (12月31日 15時) (レス) @page46 id: dda73027c9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：緑川林檎 | 作成日時：2023年8月5日 5時
