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まもなくして狭い会場内は暗転した。その直後、ステージ上が幾多の機材や楽器、そして人間を照らす。眩しい光に目をやられ、少々目を細める。

そして瞬きをする間もなく、彼らの一曲目の演奏が始まった。

鼓膜から身体、そして心臓を揺さぶるリズム。たらちゃんが叩くドラムは、彼が自慢げに話していた通りの完成度だ。開幕早々暴れるようなビート。その細い身体では、体力が持たないのではと心配させそうな勢いだ。しかし同時に、観客の興味を一瞬にして奪う。
彼のその暴れようを調和するのは、彼以上に細身のベーシスト。真っ黒なボディのベースを細い指先で丁寧に弾いている。

完璧な計算式が成り立っているようなリズム隊。そんな音に乗り合わせるのは、ギターの音色だった。
先日見たばかりの、真っ赤なレスポール。マイクスタンドの前でギターを構える彼は、照明に照らされキラキラと輝いて見えた。

「…うまいな」

隣かららだおのそんな呟きが聞こえた。彼も私と同じく、否、ここにいる観客と同じく圧倒されているらしい。
一切の瞬きを許されないような魅力をステージから感じる。

しかしここで一つの疑問が浮かぶ。それは、もうひとりのギターに関してだ。
理由は不明だが、客側から見たステージ右側だけは照明がとても暗い。ギタリストの姿はおろか、その場にいるのかすらはっきりとはわからない程だ。でも確実にそこにいる、そんな状態。

ところが周囲の客も私も、聞こえてくるその音色になぜだか興奮度を加速させられた。少々ざわついてすらいる会場内。私はその時、ぐちつぼくんが初めてギターを披露してくれたときの違和感を思い出す。
あのときの違和感と今の違和感、どことなく似ている気がするのはなぜなのか。

思考を巡らせていると、暗かったそのステージに完全な光が差した。

「キャーッ?!」

「えっ、うそ!」

「まじかよ!あのバンド、何者だ?」

耳をつんざく歓声。それらは紛れもなく、暗闇から出没したギタリストに向けてのものだった。
無理もない。その音色は突然姿を消し、消息を絶ち、今ここに突然現れたのだ。ここへ訪れている客の中に彼のファンは少なからずいる。きっと彼らは、その存在の復帰に大いに興奮しているだろう。

「…は」

『え…なんで…』

だが私達ふたりだけは、この箱内で唯一動揺していた。
彼が、緑屋霊が、新しい居場所でその音を奏でていることに。自身の音楽を【運営】以外で披露していることに。

彼の登場を祝うような歓声が、無駄に耳に響く。雑音のように鼓膜を這いずり回るそれを、私はどうすることもできなかった。

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作品ジャンル:恋愛
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緑川(プロフ) - ぴとあさん» コメントありがとうございます!!そのように評価していただけてとても嬉しいです;; 体調を崩されてらっしゃるのですね、お大事になさって下さい。当方の作品で少しでも元気になっていただければと思います! 励みになります、今後ともどうぞよろしくお願いします。 (1月2日 21時) (レス) id: 581670bd91 (このIDを非表示/違反報告)
ぴとあ - 好きです…!評価の星の右側を何百万回押したいぐらい!最近寒いので体調に気をつけて頑張ってください。(僕は今発熱なう)応援してます!あと夢主の勉強嫌いめっちゃ共感 (12月31日 15時) (レス) @page46 id: dda73027c9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:緑川林檎 | 作成日時:2023年8月5日 5時

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