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圧迫感のある低い天井、薄暗い照明、壁中を覆い尽くす様々なポスター。その空間は、想像を上回る人の数で埋め尽くされていた。
ライブハウス特有のダークな雰囲気が、私はとても大好きだ。学校と違いキラキラと眩しさを感じさせるものがない上、圧迫感のあるこの中では孤独感に苛まれることもない。

「おまたせしました、こちらアイスティーです」

表情の読みにくいスタッフからドリンクを手渡される。軽く会釈してからそれを受け取った。
開場前のホールでは、ライブの開演を今か今かと待つ多くの客で溢れている。椅子の設置されていないハイテーブルには、肘をついて談笑する人やドリンクを置いてスマホを操作する人などが立ち並んでいた。

「A、こっち」

初めて訪れたライブハウスの景色を一望していると、背後から自身の名を呼ぶ声が聞こえた。反射で振り返れば、手招きしながら私に近づくらだおの姿があった。

あの日、私は彼らからそれぞれ一枚ずつライブのチケットをもらった。なんでも、是非らだおにも今回のライブを見に来て欲しいそうで、彼の分もと渡されてしまった。
しかし実際、ライブハウスとはいえ初めて訪れる地にひとりでというのは、あまりにも心細かったのでとても嬉しかった。

「Aの友達トップバッターだ」

『みたいだね』

私の持っている配布された一枚の用紙を、らだおが左から覗き込むなりそう言った。プログラムのトップには【限界】という名が記されている。これが彼らのバンド名らしい。
初めて訪れた箱なだけあって、全体的に目を通しても聞いたことのないバンド名がほとんどだった。

「あっ、開場するっぽい。場所後方がいいよね?」

『うん、人多いからその方が助かる』

入場口が開かれるなりその場にいた客らは、誘い込まれるようにして流れていく。その光景を眺めながら、プログラムの序盤にあった有名なバンド名を思い出した。おそらくここにいる客の半数は、彼ら目的で訪れた人たちなのだろう。

そう思った途端、彼らは緊張していないだろうかと勝手に気がかりに思った。

「…どうした?もう人混みで酔っちゃった?」

『ううん、平気。楽しみだなって、それだけ』

「そっか、ならいいけど…なんかあったらすぐ言ってね」

なれない空間にやって来た私を余程心配しているのだろう。らだおは私の右肩を優しく撫でながら微笑む。
絶対に本人には言わないが、正直なところらだおがいれば安心できるので、余程のことがない限り倒れたりはしない。

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作品ジャンル:恋愛
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緑川(プロフ) - ぴとあさん» コメントありがとうございます!!そのように評価していただけてとても嬉しいです;; 体調を崩されてらっしゃるのですね、お大事になさって下さい。当方の作品で少しでも元気になっていただければと思います! 励みになります、今後ともどうぞよろしくお願いします。 (1月2日 21時) (レス) id: 581670bd91 (このIDを非表示/違反報告)
ぴとあ - 好きです…!評価の星の右側を何百万回押したいぐらい!最近寒いので体調に気をつけて頑張ってください。(僕は今発熱なう)応援してます!あと夢主の勉強嫌いめっちゃ共感 (12月31日 15時) (レス) @page46 id: dda73027c9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:緑川林檎 | 作成日時:2023年8月5日 5時

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