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「ふはっ、その様子じゃなんも聞こえてないかぁー残念…」

「…なにがそんなに不満なんだよ」

震えて一声も絞り出せない私を見かねてか、たらちゃんは吹き出してしまう。しかしどうやら、話を聞いていなかった事実に対して酷く残念がっているらしかった。彼の表情から私の過ちの程度が読み取れる。
そこで私は咄嗟に、謝罪の言葉を吐き出した。

『ぁ…ああっ、え、と…ご、ごめんなさい…!』

ガバっという効果音が付きそうな勢いで頭を下げる。どんな顔でふたりを前にしてよいか分からず、再び視界いっぱいに広がるコンクリートの地面。

「えっ!あぁ待って待って!顔上げてくださ…!っおい、たらこ!てめぇ笑ってる立場かよ?!」

「だ、だって…ふっ、無理、あっはは、Aちゃんが純粋すぎて…ははっ!、ムリっ」

突如私の言動に吹き出すたらちゃん。ぐちつぼくんの慌てた声に反応し顔を上げた頃には、彼は自身のお腹を抱えその場にうずくまっていた。プルプルと肩を震わせ、嵐を沈めるのに必死な様子。

唖然として言葉を失った。
その姿をぼけっと見つめ、彼はとても良く笑う人だなとなんとなく思う。いや違う。彼はひょっとして、毎度毎度私の言動に対してこんなにも笑っているのではないか。

パズルのピースがカチッとハマったような感覚がした。やはり私は、クラスの問題児は、クラスメイトにからかわれるような存在らしい。

『ぁ……ぅ…え、と…わ、私…なにかまずいこと…』

「あ、あぁ、ちがっ、ちがうよぉ…ふはっ、ごめんごめん。別にバカにしてるとかそういうわけじゃなくて…あはっ」

少々落ち着きを取り戻したらしい彼は、私の問いかけに応じながら立ち上がる。半笑いながらに否定の言葉を並べられても、この状況では信憑性に欠ける。

そして小馬鹿にされていることを実感してしまったからであろう。視線の先のたらちゃんのことが、みるみるうちに怖くなっていった。
昨日あんなふうな言い回しで連絡先を交換したのも、もしかするとクラスで私を笑い者にする為の情報収集を…?嬉しそうに申し出たのはそのための演技?

そんな妄想が脳内を駆け巡った。

「やっぱAちゃんっておもしろいなぁって…それだけだよ?もちろんいい意味だし、いい意味でおもしろくて、俺は話してて楽しいなあってさ!あはは!」

『…!』

前言撤回。私の瞳に映った彼という存在は、たった今、その一言で一瞬にして、心から尊敬するこれ以上ないほどに素敵なクラスメイトへと成り上がった。

「だよねーぐちさん?」

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作品ジャンル:恋愛
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緑川(プロフ) - ぴとあさん» コメントありがとうございます!!そのように評価していただけてとても嬉しいです;; 体調を崩されてらっしゃるのですね、お大事になさって下さい。当方の作品で少しでも元気になっていただければと思います! 励みになります、今後ともどうぞよろしくお願いします。 (1月2日 21時) (レス) id: 581670bd91 (このIDを非表示/違反報告)
ぴとあ - 好きです…!評価の星の右側を何百万回押したいぐらい!最近寒いので体調に気をつけて頑張ってください。(僕は今発熱なう)応援してます!あと夢主の勉強嫌いめっちゃ共感 (12月31日 15時) (レス) @page46 id: dda73027c9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:緑川林檎 | 作成日時:2023年8月5日 5時

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