: ページ17
「はぁ、もういい。それで白井さん。本題なんだけど…」
『Aで、いいです…』
あだ名で呼称する許可を得ておきながら、私のことは苗字で呼ぶ夏津樹さん。正確にはあだ名を許可したのはたらちゃんであり、私は未だその名で呼んでいないが。
それでも、私のことももっと親しい呼び名で呼んでくれないかと提案する。
「……Aさん、でいいっすか」
「えっ!じゃあじゃあ、俺Aちゃんって呼ぶね!」
「おい、俺の許可なしにそんな''ちゃん''呼びなんて…」
『うるさい黙ってて。話進まないから』
たらちゃんの「Aちゃん」という言葉に反応したのだろう。即座に反応して突っ伏していた顔をあげたらだおに、すぐさま話を遮るなと牽制の言葉を投げる。
泣く泣く私の言う通りに大人しくなった彼を見て、今日は少しやり過ぎてしまっただろうかと反省した。
しかし彼の相手は後だ。今はともかく、目の前の彼らとのコミュニケーションに専念しよう。これは好機だ。この機会を逃せば、二度と私に友達を作る絶好のチャンスなど訪れないだろう。今ここで2人と仲良くなることは私の人生の分岐点に関わると、直感が訴えかけていた。
「ええと、Aさん。俺からの頼みを端的に言うと、俺の先生になって欲しいってことなんですよ」
『…せん、せい?』
「はい。その…先日の【運営】のライブ実は俺見に行ってて。友人に誘われて一緒に行ったんです。いい機会だから、って…その時Aさんのこと見て、クラスメイトにこんな才能持った人がいたのか!って、俺びっくりしました」
「え?じゃあ君、俺たちのこと知ってるの?」
【運営】という言葉に即座に反応したのは、私ではなくらだおだった。無理もない、彼は【運営】を作り、所属する帳本人だ。
「あ、もちろんです!この高校に頼城先輩がいるって話は聞いてました。成績優秀で運動神経抜群、歌の上手さは一級品の地元で名の知れたバンドマン。俺はめちゃくちゃ尊敬してます!」
「え〜めっちゃ褒めてくれるじゃん…照れるなぁ」
唐突な称賛の嵐に、流石のらだおも照れた様子で頬をかいていた。へへっと笑うその横顔は、整った顔立ちがより一層際立って見えた。
「なぁにA〜俺に見惚れちゃった?」
『…は、はあ?別になんでもない』
じっと彼のことを見つめていると不意に目が合った。ニヤリと口角を上げたらだおに、また揶揄われる。
その表情を見た私の心音が急激に上昇したのは、彼に対して憤りを覚えていたからだろう。
そう決めつけて前に向き直った。
64人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
緑川(プロフ) - ぴとあさん» コメントありがとうございます!!そのように評価していただけてとても嬉しいです;; 体調を崩されてらっしゃるのですね、お大事になさって下さい。当方の作品で少しでも元気になっていただければと思います! 励みになります、今後ともどうぞよろしくお願いします。 (1月2日 21時) (レス) id: 581670bd91 (このIDを非表示/違反報告)
ぴとあ - 好きです…!評価の星の右側を何百万回押したいぐらい!最近寒いので体調に気をつけて頑張ってください。(僕は今発熱なう)応援してます!あと夢主の勉強嫌いめっちゃ共感 (12月31日 15時) (レス) @page46 id: dda73027c9 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:緑川林檎 | 作成日時:2023年8月5日 5時