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後ろから腰に回された手を振り解き、勢いよく振り返ってから思い切りみぞおちに渾身の一撃を喰らわした。
とてもわざとらしい悲鳴とともに離れる温もり。少々寂しく感じたのは、きっと気のせいだ。
「も〜A〜?''お兄ちゃん''にそんなことしないの〜」
『なぁにが''お兄ちゃん''よ。そんなにそう呼んで欲しいわけ?シスコンも大概にしなさいよねこの馬鹿!』
「え…A………そっかぁ、今日はツンの日かぁ」
私の吐いた暴言を別の解釈で受け止め、ひとりで勝手にうんうんと頷き理解したそぶりを見せるらだお。
その余裕な態度にさらに怒りが込み上げるが、背を向けているクラスメイトの存在をふと思い出して硬直する。
どうしよう、クラスメイトに義兄との異常な光景を見られてしまった。自分の言動への後悔と自責の念に駆られ、身動きどころか声も出なくなる。
すると固まった私に何か味をしめたのか、らだおが歩み寄ってきた。
そして今度は正面から私を抱きしめると、私の背後に立つクラスメイトに告げる。
「君ら俺のAに何の用?君たちがこんなところにいるおかげで、Aがデレてくんないじゃ〜ん」
「ね、A」と私の顔を伺うように覗き込まれる。しかしその言葉で先の怒りを思い出した私は、拳を強く握り締め叫ぶ。
『……だぁれがツンデレよこのバカぁ!!!!!!!』
思い切り憎悪を込めた拳を、目の前の馬鹿に投げ込む。しかしその勢いも虚しく受け止められてしまった。
軽々と受け止められたことに対して驚き顔を上げると、彼は余裕綽々といった表情でこちらに笑みを見せていた。
「はぁ可愛い。そんな怒んないでよA〜それに、俺はツンデレだなんて一言も言ってないよ?」
『…………チッ』
楽しげに微笑む姿にますます込み上げる怒り。受け止められた拳は彼の掌に包み込まれ、無理矢理恋人繋ぎを強いられる。
まずい、これではいつもの流れだと悟った私は、その腹の立つほど整った顔面の笑みを消さんと口を開いた。
『…もう青斗なんて嫌い』
軽く睨みつけて言い放つと、さっきまでのニコニコとした笑みは一瞬にして消えていった。途端に緩む手の力。私の背に回された腕も力が抜けたのか離れていく。
その場にペシャリと膝を着きなんとも言えない表情を浮かべられ、まるで私が悪人かのような幻覚を見せつけられる。
『嫌い、大っ嫌い。なんで嫌がることするわけ?もう一緒に帰ってあげないから』
追い討ちをかけるように私が告げると、存在を忘れかけていたクラスメイトの声が後ろから聞こえた。
「仲が…とてもよろしいことで…」
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緑川(プロフ) - ぴとあさん» コメントありがとうございます!!そのように評価していただけてとても嬉しいです;; 体調を崩されてらっしゃるのですね、お大事になさって下さい。当方の作品で少しでも元気になっていただければと思います! 励みになります、今後ともどうぞよろしくお願いします。 (1月2日 21時) (レス) id: 581670bd91 (このIDを非表示/違反報告)
ぴとあ - 好きです…!評価の星の右側を何百万回押したいぐらい!最近寒いので体調に気をつけて頑張ってください。(僕は今発熱なう)応援してます!あと夢主の勉強嫌いめっちゃ共感 (12月31日 15時) (レス) @page46 id: dda73027c9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:緑川林檎 | 作成日時:2023年8月5日 5時