確率の問題。 (ページ1)

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私は幸福だ。

……なんてことが言えるほど、満ちた人生ではなかった気がする。
世界の不幸を見れば、私なんかまだまだ幸せで、不幸だなんて言えば怒られてしまうだろう。
当然だ。
両親は今も健在だし、身内が死んだ話もない。
学校にも通えたし、卒業も出来た。
携帯も持っている。パソコンだってある。
季節毎の衣服、靴、化粧品。
程々の家に、困ることのない食事。
五体満足、内部に欠損などない、運動も仕事も出来る身体。
世の中に溢れる不幸を見れば、なんて恵まれたやつだと思う。

でも、当事者だからこそ思うこともあると思うんだ。
確かにあった方がいい。生きていく上で必要なものが大半。
世の中の不幸？そんなの知らない。
私は不幸を比べてくれなんて言ってない。
私より不幸な人がいるなんて、そんなことわかってる。

いるから、なんだと言うの？

そんなことは私の人生には関係ない。
酷い話かもしれない。
でもそう思うのだ。

両親は共働きで、帰宅すれば私より優先的に愛玩動物を愛でた。
いじめられ、教師は役に立たず、友人だと思っていた人にも裏切られた。
不安や怒りの矛先に迷い、自分を傷付けるしかなかった。
夢を持っても、真っ向からお前には無理と否定され続けて、やりたいことなどとうの昔にわからなくなった。
何人か恋人もいたけど、揃いも揃って股掛け野郎。
苦しくて病んで、死んでやろうにも怖くて動けない。そもそもそんなことなどせずに頑張れと声援を受けた。
頑張れ、と言われるだけ。

私は自分の人生を振り返ったって、幸福だと思えない。
周囲の子が親や友達と遊び、普通に学校に通い、勉学や部活に勤しみ、時には寄り道をして放課後を過ごす。
そんな生活に憧れさえした。
当然のような生活を、心の底から羨んだ。
私だってそうなりたかった。でも、様々な要因が重なって、なれなかった。
楽しいことが何一つなかったわけじゃないけど。
でも、思い出と呼べる美しいものなんか、持ち合わせていない。

もう一度言う。

私は幸福だとは思えない。