勤務42日目 ページ44
『…これでよし』
名刺を取り出し、目の前でなにやら書き込んでいる彼女
書き終わると、そのまま私へ差し出した
『今更にはなるけど、私の連絡先知らないでしょ?…名刺の番号だと裁判所の私の自室につながって裏側のは携帯につながるから…』
名刺をひっくり返せば、先ほど書いたと思われる数字が並んでいた
『もし何か話したいってなったら電話して』
名刺に"宮"の文字はない
「御心…、」
その代わりに、"御心"と書かれていた
『そういえば言ってなかったね』
以前に刑事が話そうとしてそのまま聞けなかったもの
いつの間にか聞きそびれてしまった
『私ね、苗字変わったの』
「…それはそうだろうな」
『てっきりイトノコさんから聞いたと思ってたけど…』
「……結婚でもしたのか」
彼女も世帯を持っていてもおかしくない年齢だ
あまり聞きたくはないが…どうしても知りたかった
『苗字が変わるのは、なにも結婚だけじゃない』
彼女の声は沈んで聴こえた
『離婚だってあり得るでしょ?』
「……そうだな」
『御心は母の旧姓なの、かっこいいでしょ』
彼女の笑顔は少し歪んでいた
『そうだねぇ…結婚はしていないけれど、ずっと片思いしてる人はいるかな』
片思い、か
「…苗字が変わったこと、成歩堂たちも知らないのか」
『変わってることは知ってるけど、理由までは知らないと思う…』
以前話した時の何かを隠すような言動に、今日知った事実
「…その件詳しく聞くことはできないのだろうか」
『今回の事件が解決して、御剣くんがきちんとすべてを話してくれるなら考える』
それだけ言い残して、彼女は部屋から出て行ってしまった
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作者名:紅 | 作成日時:2022年1月4日 1時