勤務36日目 ページ38
「それでは、しめやかに開廷しましょう」
「弁護側準備完了していますが…検察側は事件の立証が出来なかったんですかね?
まさか法廷にさえ姿を現さないとは…」
『…、』
宮が発言しようとしたのを遮るように弁護人が口を開く
彼女の表情はかなり冷めていた
「弁護人は彼女の襟をよく見ることですね」
『…検察側、もとより準備完了しております』
「…どういうことです?彼女は書記官では…」
弁護人の動揺の声が聞こえる
当然だろうな、私でさえ知らなかったのだから
『申し遅れました私、副検事の御心Aと申します。以後お見知りおきを』
「…御心?」
しかし今度は私が動揺する番だった
「あっ、御剣検事は知らないんスよね、実は…」
隣の刑事が話そうとした瞬間に木槌が鳴り、強制的に遮られてしまった
「これ以上時間をかける必要はありません、審議に入っていきましょう」
『すみません…、こうなるのが嫌でバッジを付けていたんですけれど…』
彼女曰く、バッジを付けているのは書記官と勘違いされないようにするため
良く考えている
「では御心副検事、冒頭弁論を」
『はい、…今回の事件では____』
淡々と資料を読み上げ、証人を呼び出す
全てが完璧で、普段の温厚な彼女からは考えられないぐらい、冷たい雰囲気だった
「さすがッスね…抜かりないッス…」
弁護人の尋問や異議にも冷静に対処していく
「__検察側は決定的な証拠を持っていない!」
『異議あり!…それならば、お見せしましょう』
まさか彼女の口からその言葉を聞くことになるとは思わなかった
なんだか不思議な気分だ
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作者名:紅 | 作成日時:2022年1月4日 1時