幻想郷【sn】 (ページ17)

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●幻想郷　1 ページ17

ru「まだかな～」
mm「もうすぐだよ」
ru「それ言うの3回目だよ」
mm「仕方ないだろ」

ラウールが人間の姿に化けられるようになって数日、2人で江戸屋敷に向かっている。

数ヵ月前にラウールが山を下りてお世話になった役人の岩本さんと深澤さんに会いに行くためだ。

勝手に山を下りた罰として天狗にこっぴどく説教された挙句「もしまた山を下りたいのなら人間に化けられるようになれ」と言われ、この数ヵ月今までさぼり続けた人間に化ける特訓をしたのだった。

めでたく人間に化けられるようになったラウールとこうして一緒山を下りた訳だが、久しぶりの町に方向感覚が鈍って、2回も道に迷ってしまった。

ru「手土産だって買えてないのに」
mm「忘れてた」
ru「もう…しっかりしてよ」
mm「うるさい。ほら、あそこだろ？岩本さんが好きな甘味処」
ru「そうだ！僕、買ってくるね！」

カタカタと下駄を鳴らして走って行く後ろ姿を見て、自分の幼い頃を思い出す。

あんな風に走っては転び、頑張って働いて、クタクタになって寝る。

今の恵まれた環境とは比べ物にならない程に大変だったけど、今でも変わらないのは可愛い妖が傍にいることか。

可愛くて仕方がなかったあの小さな純白の狐は、今も江戸屋敷で元気にしているかな。