幻想郷 1 ページ1
世界は広い。
自分が見ていることが全てではない。
そう教えてくれたのは誰であったか。
今となっては思い出すことも出来ない。
もし、いつか。
その人物に出会うことが叶うのなら、貴方の言うことは本当でしたと伝えたいものだ。
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小さな小さなキツネのような、猫のような…
純白な毛並みと琥珀色に輝く瞳をもつモノを拾った。
ソイツはとても甘えん坊で寂しがり屋で、目の端からいなくなると家中を駆け回り俺を捜すのだから、常に傍に居る。
お気に入りは、胡坐をかいた時の窪み。
ソイツはいつも幸せそうに笑っていた。
状況が変わったのは、今から5年も前。ソイツを拾って2年経った頃。
親もおらず町の外れで貧相な暮らしをしていた俺は、犯してもいない罪を着せられたのだ。
聞かなくとも分かる。
貧乏人はそうやって罪を誰かに擦り付けられ牢屋に入れられることは、当たり前に行われているからだ。
今までの俺なら何も思わなかっただろう。
そうやって人生に終わりを迎えても、分かっていたことだと諦めたはずだ。
でも今は、今は違う。
こんな俺の傍にずっと居てくれる温かい存在から離れることが辛くて仕方がない。
着物からはみ出た足に感じる毛並み。
視線を落とせばこちらを見つめるつぶらな瞳。
あぁ…願わくばお前の成長を見届けたかった。
どうかこの子に神のご加護がありますように。
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作者名:乃ノ葉 | 作成日時:2020年6月4日 19時