路地裏 ページ12
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『不破さん』
深夜の2時、真っ暗な空に反して煌びやかなネオン街。そんな夜の街の路地裏に、ピンクと紫のメッシュ頭を見つけたものだから、近づいて声をかけてみればびっくりしたような表情で。
不破「Aさん!どしたんすかこんな時間にこんな所…危ないっすよ」
『私今日笹木とのオフコラで、終電逃したし運動のために歩いて帰ろうと思って…近道なんでここの道通ったら不破さんいたから、みたいな』
私がそう言うと、不破さんは納得したような顔。不破さんこそこんな路地裏で何やってるんですか、と聞こうとしたところ、不破さんのスマホの通知が鳴った。
不破「あ、…まぁいっか」
スマホを取り出して、誰からか確認した後にそう呟いて電源を切った不破さん。深夜の2時に電話がかかってくるなんてこと私じゃ考えられないな、なんて。不破さんの綺麗な紫のアイシャドウも落ちかけていて。
『…肩、濡れてますね』
ずっと気になってた。雨でもないのに不破さんの綺麗で派手なスーツ衣装が雫を垂らしていたから、なんかあったんだろうなって。スーツの下に着てるシャツも第3ボタンくらいまで開けているから、きっとシャツまで濡れたんだろうな。
不破「…今電話かけてきた子に、お酒ぶっかけられて…まだ指名終わってないんですけど、ちょっと抜け出してきたっす」
どこを見ているのか分からないけど、地面の一点を見つめる不破さん。
考えたら、深夜2時まで仕事をして、帰ってご飯食べてお風呂入って配信して寝て収録して…なんて生活ができる不破さんって凄いよなって。
だから、気づいたら不破さんの頭を撫でていても嫌がらなかったのは、きっとほんとは誰かに優しくして欲しかったのかな、なんて。
不破「………んはは、優しいすね」
『不破さんはすごい、と思いますよ』
配信やろふまおのコメント欄でよく言われていた、不破と九十九の不仲説。全くコラボしないし、動画や配信での2人の絡みも少ない。
もちろんそんなことは無いんだけど、そんな風に噂されると気にしちゃうわけで。お互いオフでも避けあってたけど、今日はなんだか違う気がした。
腕時計が指す時刻はもう2時半。不破さんの仕事を邪魔できないから、最後に本心でも伝えておこうと。
『…不破さん、無理しないでね、じゃあまた次の収録日に』
そうしていつの間にか下ろしていた腰を上げて、不破さんに手を振って路地裏から抜けようとしたとき。
不破「………まだ行かんといて、ください」
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作者名:きゅーぽん | 作成日時:2023年8月20日 19時