【npl】引越し先にて。２ (ページ1)

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「急いでないから、返事はいつでもいい」

そういった蘭の言葉をまた簡単に忘れられないままその日はもちろん同じ帰路を辿っては、隣の部屋に帰って行く蘭を見送っては、外着のまま部屋のベッドにダイブして、顔をうずくめた。

「…ハッチさんの言うこと、本当だったなあ」

ぼーっと沈んでいくように、ベッドで横になったあとスマホをいつものように手グセで触ってはここに引っ越してきてからのことを遡る、初めて入居した日に蘭が私のこぼした荷物を一緒に広い集めてくれたこと、当時付き合っていた恋人と別れたての私を支えてくれたこと、その後みんなと仲良くできて今に至るのも全部、蘭のおかげかもしれない。スマホの中に保存されたみんなと遊んでいる時の写真をスクロールして見返す。

「…好きとか、付き合うとか…」

今までの生活が充実しているのは、蘭やみんなのお陰であるけど、昔の恋人に良い別れをしていないせいか、当たり前にすぐ返事ができるわけはなく悩みというものではないがこのふわふわした感覚は続く。髪の毛を解いて化粧を落としては寝る準備を済まし、リセットするように眠りについた。

次の日もいつも通り目が覚めては、出勤する準備を淡々とこなし、その日の気分で靴を選んではドアを開けると天気は良いもののまだ空気は少し冷たくて自然と身震いする。

「Aちゃーん！」

「あ！すぎるさん！」

前から知ってはいたが私とすぎるさんは朝、家を出る時間が近い。下の階に住んでいるすぎるさんが私の方を見て手を振り、それに返す。

「Aちゃん、おはよう！実は待ってたねん！」

「おはようございます！え？待ったの？」

「うん！実はな～！」

朝からにこにこな笑顔でいつもより少し上機嫌に見えるすぎるさんは、手に持っていたランチバックを私の方へ向ける。

「これ！Aちゃんに！」

「え…！これって…！」

「お弁当な！前に何回か作ってもらってたから、今日は俺が作ってみた！」

「お弁当！本当に？いいの？嬉しい～～！今日丁度買いに行こうと思ってて！」

「食べて食べて！あんまり余裕なくて、お返しできへんくてごめんな、でもちょっと練習して作ってみたねん。」

私が嬉しくて自然と笑顔になると、「多かったらごめんね」だなんて付け足してすぎるさんは少し謝った。人からお弁当をもらうことがこんなに嬉しいことだなんて。その日のお昼の時間はいつもより特別で、貰ったお弁当はもちろん美味しかった。