二人きり ページ26
「あ、よかったらどうぞ」
特定の異性と二人きりになるなんて久しぶりだなんて思いながらも立ちっぱなしもなんなのでベッドの傍らの椅子を勧めれば彼はそこに腰を落ち着かせた。
「Vさんのせいじゃないのでそんな顔しないでください」
大きな瞳からは今にも涙が零れ落ちそうで絵になる人だなと思う。
「…僕がVライブでThetisのこと言わなきゃよかった」
ああ。彼のネックはそれなのだろう。
たった、ほんの少し口に出してしまった話題をずっと悔いているのだろう。Vさんのせいじゃないのに。
確かにあの根も葉もない熱愛の噂は彼のその発言がきっかけだったのかもしれないけれど。
「私、嬉しかったんです」
不思議そうに首をしゃくって見上げてくるのに微笑み返して「刺されたのが嬉しかったわけではないですよ？」と冗談交じりに返してみる。
「Vさんに、『fake』が好きだって言って貰えて、応援してるって言って貰えて嬉しかったんです」
「でも、」
「もしかしたらVさんも知ってるかもしれないですけど、私、アンチが多くて。平気なフリをずっとしてたけど、正直参ってたんです。そんな時にVさんは褒めてくれたから。現にVさんのおかげでThetisの曲が好きだって言ってくれる人も増えたんですよ？」
今回の件で彼が傷つくことなんてちっともないのに。
それなのにこんな風に心を痛めてしまうなんて優しい人なのだろう。
「どうして、どうしてそんなふうに言えるの？」
「え？」
「Aちゃんが刺される理由なんてひとつもないのに」
「……確かに、私が何をしたの、って思わないかって言われたら嘘になります。どうして私が刺されなきゃならないの。どうして私が責められなきゃならないの。どうして、歌だってダンスだってたくさん練習してるのに。ポジションを間違えたのはナウンの方なのに」
勢いで言ってしまって、はっと顔をあげる。ナウンのことは言うつもりなかった。
「聞かせて。誰にも言わないから」
ゆっくりと、諭すように彼は言う。
「一度ついてしまった先入観ってなかなか拭えないんですよね」
どんなに努力したって、私は歌が下手だとダンスが下手だと言われてしまう。だけどそれでウジウジなんてしてられないから、笑いに変えたりして。
そうやって取り繕ってきた。
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とりむねにく(プロフ) - すごくすごく好きです、陰ながら応援しています！ (2021年8月25日 0時) (
レス) id: 69a1b6ff8d (このIDを非表示/違反報告)
lu(プロフ) - ゆっこさん» コメントありがとございます！よろしければ最後までお付き合いください！ (2021年7月10日 11時) (レス) id: 02c879ed67 (このIDを非表示/違反報告)
ゆっこ(プロフ) - 素敵な作品をありがとうございます！続き楽しみにしています！ (2021年7月8日 0時) (レス) id: 354b579e15 (このIDを非表示/違反報告)
lu(プロフ) - うみさん» コメントありがとうございます！嬉しいです、完結まで書こうと思うのでお付き合い下さい (2021年7月7日 18時) (レス) id: 02c879ed67 (このIDを非表示/違反報告)
うみ - とっても好きな雰囲気の作品に出会えました！！ありがとうございます！続き楽しみにしてます！ (2021年7月6日 12時) (レス) id: 562e9c2773 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：lu | 作成日時：2021年7月4日 3時
