【rtrt】不安症の彼 (ページ15)

今日:7 hit、昨日:14 hit、合計:120,795 hit

１５。ページ15

.

「ごめんね、まだお酒飲みたかったよね」

「なんで謝るの。ごめんじゃなくてありがとうでしょー」

隣を歩くレトくんはいつも通りの優しい笑顔で、体調悪いの気付かなくてごめんねと謝っている。そんなの、気にしなくていいのに。

「家着いたら、おかゆでも作ろっか。」

「…うん。ありがとう。」

街灯の灯りが作る影を眺めながら、頭の中では戦争が始まっていた。浮気されてても好きだからと容認する私と、問いただそうよ！と怒る私。ああ、また頭が痛くなってきた。

「お邪魔します！じゃ、キッチン借りるね」

「うん。少し散らかってるけど…私、着替えてくるね」

寝室に戻り、ラフな部屋着に着替えてリビングに行くと、既に料理し始めているレトくん。手伝おうとすると、休んでなさいとソファに追いやられてしまった。

「ごめん…じゃなくて、ありがとう」

そう言うと満足そうに笑っているレトくん。やっぱりあの笑顔が好きだ。

「はい、完成！」

熱々のおかゆに柔らかい卵が乗っている。彼は当たり前のようにあーんと言って私に食べさせてくれた。今日くらいは甘えよう。少し恥ずかしく思いながらも、口にした。

「…おいひ。」

「ふふ。そうでしょー！」

Aちゃんに教えてもらった作り方だから、美味しいに決まってるよ。と無邪気な顔で笑う彼。この笑顔は私だけのものじゃないのかもしれない。そう思うと寂しくてたまらない。

.