虹 (ページ23)

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第23話ページ23

会議開始から一時間、正直眠くなって来ているA。珈琲を飲み喝を入れ、相手の話を聞く。
次のタイアップはとある化粧品ブランドのデオドラント。
主に学生に人気で、数滴肌に塗るだけで汗の臭いを抑え香りが広がる、正に体を動かし汗っかきなメンバーにぴったりの商品。

「動画内容…なのですが、企画はお任せします。しかし出来るだけ"七人全員"でお願いします」

『…、…はい』

「言ってくだされば、商品も注文本数分お送りしますので」

『すいません、ありがとうございます』

「いえ、こちらこそ動画を楽しみにしております。メンバーの方々にも宜しくお伝え下さい」

頭を下げ見えなくなるまで見送った。
｢七人全員｣と言われた時、脱力感が襲っていた。
彼等も元々YouTuberなど知らなかっただろうに、わざわざ調べて自分達を選んでくれたんだ。
悪くない、何も悪くない。
悪いのは、裏方作業を理由に動画から距離を置いていた自分だ。

会議も終了した所で荷物を纏め、帰るついでにメンバーの様子を見に行く。
タイアップの内容も軽く話しておこう。

『シルク…？』

スタジオを覗くも誰も居ない。
終了し先に帰ったのだろうか。少しぐらい待ってくれてもいいのでは。
そんな負の感情が次々に出て来ては、駄目だと掻き消す。

ﾝﾀﾞﾎ「ちゅーん！」

『あ、ダホ…？』

ﾝﾀﾞﾎ「雨降りそうだから乗ってきなー！」

事務所の駐車場を出るところだったンダホ号。
なんだ、まだ居たのか。
何時もと何ら変わらないさり気ない気遣いでさえ何だかとても嬉しく感じる。
そのまま一行は、タイアップの動画会議の為にシルク宅へ移動した。