虹 (ページ12)

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第12話ページ12

Fischer'sメンバーは中学時代各々苦い思い出がある。一匹狼で突っ張っていた者もいれば、虐めにあう者、またそれを庇い虐められていた者。そして被害者、加害者の中間に居て何も出来ずにいた者。
年齢が二桁になったとは言え、まだまだ中身は半端な大人。それすらなれていない者も沢山いる。
揉め事は日常茶飯事だった。
斯く言うAも、中性的な外見、声変わりもそこそこな一般的な男子より少し高い声、細身な体から女だとからかわれて来た。
いじめっ子グループからは｢ことりちゃん｣と呼ばれ、放課後呼び出されては女子制服や体操着を着させられた。

ｼﾙｸ「あぁあぁ～」

『何？きもい、何？』

ｼﾙｸ「ちゅんちゅん、もっと筋トレしよう」

『何急に』

ｼﾙｸ「護身術教えてやるから」

『は？』

自分は当時、一匹狼を気取って皆と行動を共にしていなかったから、何も知らなかった。
あの時助けられていたら、傷つかずに済んだのだろうか。
メンバーが絡まれたと聞けば今でも勿論心配になるし、飛んで助けに行きたい。
皆大人だからそれぞれちゃんと対応出来るのだけれど。

『トイレ貸して』

ｼﾙｸ「おう」

Aがトイレに向かったタイミングでマサイはカメラを切り、適当に座り携帯を弄り出す。
編集画面へと視線を落としたシルクに、口を開いた。

ﾏｻｲ「お前心配し過ぎじゃね？」

ｼﾙｸ「…心配もすんだろそりゃ。お前だって心配だよ俺は」

ﾏｻｲ「俺？何で」

ｼﾙｸ「短気だけど視聴者には優しいから、お前」

「優しい」なんて唐突に褒められて、照れ隠しに鼻で笑う。
少し話していると、インターホンが鳴り、モニターを確認するとカメラの前でメンバーの一人であるダーマが謎のダンスを踊っていた。

ｼﾙｸ「また踊ってるぞアイツ」

ﾏｻｲ「ダーマ？」

『誰か来たの？』

ｼﾙｸ「ダーマ。また踊ってる」

｢早く来い｣と扉を開けやっと玄関まで来た。
今日はダーマと二人での撮影予定だったらしい。
久し振りにAを見るダーマだが、特に驚きもせず軽く挨拶をした。
その後、せっせと準備をし始めるシルクを他所に定位置に座り、マサイとAも誘われ素直にカメラ前に座る。
シルク以外何をやるのか知らないので、またとんでもないものでは無いかとそわそわする。

ﾀﾞｰﾏ「何すんの？また変なおもちゃ？」

ｼﾙｸ「いや、今日は楽しいやつ」

口角を上げてニタリと笑ったシルクが、録画ボタンを押して間に割って入り、撮影が開始された。