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side / J
しょうもないことでケンカになって、向こうから話しかけてきたら普通に接しようと思ってたのに、いざ話しかけられたらめちゃくちゃそっけない返事になってしまった
泣きそうな表情(だったような気がした)で 「なんでもあらへん」と言った大橋は逃げるように楽屋から出て行った。いつものこと、と悟ったメンバーからの「今なら間に合う」とでも言いたげな表情に腹が立つ。そんなんわかってる、わかってんねん。今すぐ大橋を追っかけて、「ごめんな、俺が悪かった」とかなんとか言えば、すべては丸くおさまるねん。せやけど、自分でもよくわからないプライドがそれを許さへん
行くところもないけど、家に帰りたくなくてわざと遠回りに遠回りを重ね、時計に目をやるともう0時近くになっていた。さすがに時間をつぶすのも難しくなり、重い足取りで家に向かう。まだ起きてるんかな、どんな顔したらええんやろ、考えれば考えるほど憂鬱になる
住み慣れた自宅の鍵を開けるのに、なんでこんな重たい気持ちにならなあかんねん、そもそも俺が住んでるとこに転がりこんできたのはあっちやし、とブツブツ言いながら部屋に入る
部屋は真っ暗で、靴はあるのに、居るはずの姿が見えなくて、途端に不安になる。キッチン、リビング、風呂場、洗面所、ベランダすべて確認して、最後に入った寝室のベッドの上に、布団に包まり、俺の部屋着を抱いて眠っている大橋を見つけて安堵する。
いとおしくて、いとおしくて、寝てると分かっているのに思わず声を掛けてしまう
「大橋、ごめんな」
いつもやったらベタベタされるのは苦手やねんけど、あした起きたら、ぎゅっと抱きしめたってもたまにはいいかな、と思う
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作者名:. | 作成日時:2018年7月12日 19時