漆拾肆 ページ42
────結界内から羂索の気配が消える。それを確認した途端、私は気付けば後ろに倒れ込んでいた。
『〜〜〜〜っ！よく耐えた私ーーー！！！』
思わず拳を突き上げる。この開放感！浸らずにいられるか！だってマジで手出そうだったもん！
「まぁったく……殺せばよかったものを」
『そうはいくか、あほ』
仰向けの私の視界に入ってきたのは、にやりと口角をあげる天狐の顔。
そのまま私の隣に座るので、私も起き上がる。
「なぜ渡した？」
『ん？』
「あの得体の知れぬ呪物のことじゃ。やつの手に渡らぬよう、主が持っていたはずではなかったのか」
『ぎく』
確かに、天狐は勘づいていてもおかしくはない。何せ私が宵薙家を潰したその時から共にいる、いわば相棒のようなやつなのだ。
『……ま、私にも私の理由があんだよ』
「主よ。これをただの閑談と思われては困る。主は何か────」
────隠し事をしておるだろう。
天狐の言葉に、かつてないほど心臓が跳ね上がった。すんでのところで顔に出そうになるのを抑える。
まさか、そこまで気付いているとは思わなかった。
いや…思いたくなかった。
『はぁ？隠し事なんざひとつもないよ。少なくとも私にはな。変な勘ぐりはよせ』
「主は時が経つごとに、焦燥を覚えておるように見える。火を見るよりも明らかにのう」
『いや、それは別に、』
「───未来に何がある？主には何が見えておる？」
兄様の時といい、今といい。そして、千代のことも。
私の恐れや怒りは、きっと、不変への執着からくるものなのだろう。
兄様が死んだ時、私は言いようのない怒りを覚えた。それは兄という永遠に続くと思った幸せを壊された、怒り。
宿儺や裏梅が死んだ時、私はどうしようもない恐怖を覚えた。私の行動が原作に影響するのではないか、という恐怖。
そんなふうに、なにもかも在るべき形が、もしくは理想とする形があった。
こだわりとはまた違うけれど、そういう思いは常に頭の上に乗っかって、私を縛っていた。
私は不変を欲している。今この時がずっと続けばいいと思いつつも、それが訪れないのを知っている。
でもそれを天狐やみんなに話すのは、もう私にはできない。それもまた、私、宵薙Aの在るべき形だから。
『本当になんの見当もつかない。何の話だ？天狐』
ただ今が、少しでも長く続いてほしい。
頼むよ、神様。
終わり
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うさちゃん(プロフ) - ん"ん"ん"ん"ん"ん"ん"好きです！だいすこ。続き楽しみに待ってます (3月27日 11時) (
レス) @page42 id: bdc57886de (このIDを非表示/違反報告)
ファナやん - おもしろいです!可能なら原作軸や懐玉編もみたいです! (9月10日 15時) (レス) id: 3812986166 (このIDを非表示/違反報告)
りんか(プロフ) - 面白すぎて何回も見返してます！更新再開してほしいです…頑張ってください！！ (8月7日 14時) (レス) @page42 id: d3fb5e7475 (このIDを非表示/違反報告)
もこ(プロフ) - コメント失礼します！私愛され大好物なので嬉しいです！呪術廻戦のキャラ全員推しなので嬉しいです！更新頑張ってください！ (6月24日 10時) (レス) id: 79dfdf41ef (このIDを非表示/違反報告)
有栖 - めっちゃ面白いです。更新頑張ってください。(*≧∀≦*) (2023年2月5日 15時) (レス) id: e77b6774d0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：蝋燭 | 作成日時：2021年10月1日 23時
