陸拾参 ページ31
結局A様は、外の日が落ちても部屋から出てくることは無かった。
A様が相当落ち込んでいるのは分かる。千代さんが亡くなったのは俺も悲しいし、A様は特に悲しいだろう。けど何も食べないのは体に悪い。いくら死ななくても、だ。
俺は適当に作った握り飯と味噌汁を持って、A様の寝室へと向かう。天狐さんと猫魈さんも今は休んでいるから、屋敷はシンと静まり返っていた。
「あの…A様。起きてますか？」
襖越しに声をかけてみたが、返事は無い。
流石に寝ちゃってるかな。そう思い立ち去ろうとすると、ふいにA様の部屋の戸が開いた。
『あぁ……椿か』
「A様！ 起きていらしたんですね」
『……それはなんだ、夜食か？』
「はい。良ければと思って…お召し上がりになられますか？」
『…そうだな、腹が減った。食おう』
A様は俺の手から夜食の乗ったお盆を取ると、そのまま縁側に座って握り飯を食む。良かった、食欲はあるみたい。
「それじゃあ俺は……」
『なんだ、まだ主人が食事中なのに先に休む気か？』
「えっ」
『ちょっとくらい付き合えよ、ほら』
A様は自身の術式で俺を引き寄せると、そのまま強制的に隣へ座らせられる。戸惑っている俺を他所に、鮭か…、と呟いたA様は、また無言で握り飯を食べ進めた。
A様の意図は分からないが、ふと空を見上げ、無意識に夜空へと目を奪われる。漆黒の中浮かぶ月はA様みたいに輝いていて、散りばめられた光が装飾となってより美しさを増す。
A様、と俺は話しかける。
「……あの、どうして千代さんの死をこれほどまでに悲しんでいるのですか？」
その質問は、人によっては酷く冷淡で、無情なものに聞こえるかもしれない。だけれど俺は、これがずっと疑問で仕方がなかった。
A様は呪術師という役柄もあるからか、特定の人に肩入れするような性格ではない。知人だろうと友人だろうと、その人が死んでも涙一つ流さずそれを受け入れる。それが俺の知るA様だ。
A様は握り飯の最後の欠片を飲み込むと、ふむ、と考えるような仕草をする。そしてどこか遠い目をしながら俺の質問に答えた。
『…彼女は私の兄に似ていたんだ』
「ご兄弟…ですか？ A様ってお兄さんとかいたんですね、初耳です」
『ま、そりゃ
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うさちゃん(プロフ) - ん"ん"ん"ん"ん"ん"ん"好きです！だいすこ。続き楽しみに待ってます (3月27日 11時) (
レス) @page42 id: bdc57886de (このIDを非表示/違反報告)
ファナやん - おもしろいです!可能なら原作軸や懐玉編もみたいです! (9月10日 15時) (レス) id: 3812986166 (このIDを非表示/違反報告)
りんか(プロフ) - 面白すぎて何回も見返してます！更新再開してほしいです…頑張ってください！！ (8月7日 14時) (レス) @page42 id: d3fb5e7475 (このIDを非表示/違反報告)
もこ(プロフ) - コメント失礼します！私愛され大好物なので嬉しいです！呪術廻戦のキャラ全員推しなので嬉しいです！更新頑張ってください！ (6月24日 10時) (レス) id: 79dfdf41ef (このIDを非表示/違反報告)
有栖 - めっちゃ面白いです。更新頑張ってください。(*≧∀≦*) (2023年2月5日 15時) (レス) id: e77b6774d0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：蝋燭 | 作成日時：2021年10月1日 23時
