卌伍 ページ4
暫くして落ち着いた男を観察する。
暗さで闇と一体化して見える黒髪。寒さで指先などが赤くなっており、華奢な体躯を震わせて膝を抱えている。
何よりその____目。白目の部分は黒く、赤い瞳孔は涙で潤んでいる。そして額にもうひとつの目。
すげー、三つ目って初めて見た。いや、今まで祓った呪霊の中にもいた気がする。
『まぁ、取り敢えず……』
保護するか!
そこからは早かった。
怯える青年に適当に反物を着付け、彼を抱えて(横抱きしたらめっちゃ顔真っ赤にしてた)猫魈を呼び出し屋敷へ帰った。
猫魈と天狐はあまり良い顔はしていなかったが、私の判断に委ねる事にしたようだ。うんうん、物分りの良い子は好きだよ。
青年は屋敷に着いても術式の引き金となる目を頑なに開けず、柱などによくぶつかった。前が見えてないなら目開けろよ、私が抑えといてやるから。
『一先ず術式を無効化させる何かを作った方がいいな…』
始まりました、〈術式を無効化させる呪具を作ろうの会〉!パチパチパチ!!
『天逆鉾刺しときゃ良くないか?』
「「良くない」」
私の一言にそう返したのはアニマルセラピー要員の天狐&猫魈。青年は適当な部屋に寝かせてる。なんで?大丈夫でしょ、刺すくらいの痛み(この人は痛覚がバグっています)
「主は確かにそれでも大丈夫かもしれんが…流石に、それは…」
「……他の方法を考えた方がいいと思うわよ」
『えぇ……じゃあ、針?』
「いや、まずは刺すという発想から離れろ」
『うーん……猫魈はなんか無いか?』
「もう眼球ごと抉ったらいいんじゃない?」
『それじゃあ結局前見えないだろ』
「いや、そういう問題じゃなかろう!お主ら揃って物騒じゃな……」
怖、と腕をクロスさせて自分の体を抱き締める天狐。お前私といて大分人間寄りになったな……呪霊の考え方って矯正できるのね、ウケる。
うむむ、と顎に手を当て頭を捻る。
『面布…なんてどうだ?』
天逆鉾と同じ術式を付与すれば、三つ目も隠せるし良いのでは?
『てことで猫魈、適当にどっかから面布くすねてきて』
「分かったわ!」
術式の裂け目に入っていく猫魈を見届けると、天狐の視線を感じそちらを見る。
『なんだ?』
「いや…盗みは良くないじゃろ……」
『金は持たせてる』
そう返せば、はぁ、と溜息をついて天狐は天井を見上げた。人間らしいその姿に、少し微笑ましい、なんて。
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うさちゃん(プロフ) - ん"ん"ん"ん"ん"ん"ん"好きです!だいすこ。続き楽しみに待ってます (3月27日 11時) (レス) @page42 id: bdc57886de (このIDを非表示/違反報告)
ファナやん - おもしろいです!可能なら原作軸や懐玉編もみたいです! (9月10日 15時) (レス) id: 3812986166 (このIDを非表示/違反報告)
りんか(プロフ) - 面白すぎて何回も見返してます!更新再開してほしいです…頑張ってください!! (8月7日 14時) (レス) @page42 id: d3fb5e7475 (このIDを非表示/違反報告)
もこ(プロフ) - コメント失礼します!私愛され大好物なので嬉しいです!呪術廻戦のキャラ全員推しなので嬉しいです!更新頑張ってください! (6月24日 10時) (レス) id: 79dfdf41ef (このIDを非表示/違反報告)
有栖 - めっちゃ面白いです。更新頑張ってください。(*≧∀≦*) (2023年2月5日 15時) (レス) id: e77b6774d0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蝋燭 | 作成日時:2021年10月1日 23時