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伍拾陸 ページ22

地下はそこまで深くないようで、扉から続いた階段を下り終わるのに数分もかからなかった。


(…にしても、何も見えないな)


余りの暗さに困った私は、術式で影の中から手燭を引っ張り出す。そして術式で適当に火を起こすと、暗闇の中へ足を踏み出した。


「…………ん?」


少し歩いたところで、小さな机のようなものが目に入った。机、と言っても高さは食卓と同じ程度。腰より下の高さしかない。

机の上には数枚の書き込まれた紙と、妙な筒状の何かがあった。

紙を手に取って目を通してみる。達筆な文字で綴られた言葉を取り上げるとすれば、″呪霊″、″特異体質″……。何を書かれているのかは分からないが、大方呪胎九相図の事だろう。


「…つまりこん中にゃ、例の九人兄弟が入ってるって訳か」


紙と共に置いてあった、九つの筒状の物。手を近づければ、睨むような呪力をひしひしと肌で感じる。警戒されってるっぽいな…いや、胎児なのに意識あるのか?呪いだから有り得ないことも無さそうだが。


「─────……Aさ、ん……?」

「……千代?」


先程は暗くて分からなかったが、この部屋には奥行きのある座敷牢があった。
聞き慣れた声がその座敷牢からして、私は唖然としながら中を照らす。手に持っていた紙は床に散らばった。


「あ…本当に、Aさん、だ……」


座敷牢にいたのは、憔悴しきったボロボロの千代だった。一瞬、本当に千代なのか分からなかった。

普段の明るい声はか細く弱々しい声に、綺麗に結んであった黒髪は無造作に乱れ、いつも皺ひとつなく整えられた服はズタボロに薄汚れていた。


「───ッ千代!!!」


私は座敷牢の鍵を壊して扉を開け、千代に駆け寄る。今までずっと暗闇の中にいたからか、手燭の仄かな光に眩しそうに目を細めた。


「夢、なのでしょうか…またAさんに、会うことが出来るなんて……」

「夢じゃないさ。本当にすまない、私がもっと早く助けに来ていれば…」

「…いいえ、私が悪いんです…父と母はAさんに相談しろと言ったのに…私はそれを聞きませんでした。貴方に、不貞な女性だと思われたく、無かったから……」


段々と涙声になっていく千代。つられて私の目も涙で濡れる。だが喜びよりも、それ以上に怒りが心の大半を占めていた。

よくも千代をこんな目に合わせてくれたな、あの脳みそ野郎。お前は肉片一つ残さずぶっ殺してやる。

伍拾漆→←伍拾伍



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設定タグ:呪術廻戦 , 愛され(?) , 見切り発車   
作品ジャンル:ファンタジー
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うさちゃん(プロフ) - ん"ん"ん"ん"ん"ん"ん"好きです!だいすこ。続き楽しみに待ってます (3月27日 11時) (レス) @page42 id: bdc57886de (このIDを非表示/違反報告)
ファナやん - おもしろいです!可能なら原作軸や懐玉編もみたいです! (9月10日 15時) (レス) id: 3812986166 (このIDを非表示/違反報告)
りんか(プロフ) - 面白すぎて何回も見返してます!更新再開してほしいです…頑張ってください!! (8月7日 14時) (レス) @page42 id: d3fb5e7475 (このIDを非表示/違反報告)
もこ(プロフ) - コメント失礼します!私愛され大好物なので嬉しいです!呪術廻戦のキャラ全員推しなので嬉しいです!更新頑張ってください! (6月24日 10時) (レス) id: 79dfdf41ef (このIDを非表示/違反報告)
有栖 - めっちゃ面白いです。更新頑張ってください。(*≧∀≦*) (2023年2月5日 15時) (レス) id: e77b6774d0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:蝋燭 | 作成日時:2021年10月1日 23時

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