斑鳩士門 ページ34
今日は違った。
夕暮れの公園のベンチに二人で座る。堰を切ったようにこいつの目から涙が流れた。
「わ……っ、別、れた……っ！別れ、ちゃった……！」
何度も嗚咽を漏らしながら、俺に伝える。
「すっごく、……すっごく、ねっ……好き…っ………だった、のに……、別れ、ようって……！」
右手で俺の袖口を掴む。左手は止まることを知らない涙を拭っていた。
「嫌だって、言った……よっ？けど、……もっ、もう、気持ちはないっ……って、い、言われたぁっ……！」
俺は……ただ黙って聞いていた。それが正しい判断なのかは分からない。いつもだったら彼氏との惚気話を聞かされている。今日もそうだと思った。俺の隣で、日頃のメールのやり取りや電話の内容。そして、……デートの話をしているんだ。時々、怒ったり泣きそうになったりもしていたが、照れた顔が一番多かった。話をするのは学校終わりの夕暮れ。だから、辺りのオレンジとの相性がとても良かった。
―――……なんで俺じゃないんだろう。
そんな想いがいつも胸を締め付けていた。遊ぶのは勿論、学校の登下校、任務……。プライベートから仕事まで、いつだって俺が隣にいた。誰よりも長い間、近くでこいつを見てきた。なのに、なんでこいつの口からは違う男の名前が出るんだ……？
「士門、どうしよう……どうしたら、いいの……っ？」
目を擦りすぎたのか、赤くなっていた。少し腫れてきている気もする。鼻も赤い。
「もう一度、話し合った方が……っ」
「止めておけ。」
やっと口を開いた俺の言葉に、こいつは戸惑いを見せた。予想外の言葉だったんだろう。
「もう、あんな奴の事は忘れろ。」
「なんで……？だってまだ、私っ……！」
「こんな辛い想いをさせた男の事なんか忘れろって言ってるんだよ……っ！」
俺の声に驚いたのか、肩をびくつかせ、ゆっくりと下を向いた。こいつに声を荒らげたのは初めてかもしれない。
「一人で忘れられないなら、……俺が忘れさせてやる。」
またしても、予想外の言葉だったんだろう。勢いよく顔を上げ、俺を見る。
「もう気持ちがない、これはどうしようもないが、まだ気持ちがない、はどうにでも出来る。」
顎に手を添え、親指で唇をなぞる。
「お前を好きにさせるから待ってろ。」
*20170609
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Aris - 天馬の感情がとても可愛いかったです( ^ω^ ) (2021年5月17日 22時) (
レス) id: 07b3866fc0 (このIDを非表示/違反報告)
藤田(プロフ) - 紅兎さん» 紅兎さんありがとうございます(´；д；｀) 以前よりも遅くなってしまいますが更新がんばります！ (2019年12月4日 22時) (レス) id: dd4451f660 (このIDを非表示/違反報告)
紅兎(プロフ) - 主さまのペースで更新頑張ってください！いつまでも待ってます！ (2019年12月1日 14時) (レス) id: 83a25d3fd1 (このIDを非表示/違反報告)
藤田(プロフ) - 夜桜さん» 夜桜さん、コメントありがとうございます。消化頑張ります＞＜ かなり不定期な更新ですが、気長にお待ちいただければと思います！ (2017年12月16日 15時) (レス) id: ec78dea903 (このIDを非表示/違反報告)
夜桜 - 初めまして！とっても良かったです！リクエストの消化頑張ってください！更新待ってます！ (2017年12月12日 15時) (レス) id: e7a9357e65 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：藤田 | 作成日時：2017年1月17日 23時
