天馬 ページ32
声が聞きたくなった。顔が見たくなった。触れたくなった。こんなにもふわっとした言葉が、それがどういう意味なのかを教えてくれる。
「入るぞ。」
夜だし、一応言葉をかけて入る。部屋の中は、奥にあるベッドの横のランプの灯りだけ。ベッドには―――……俺の会いたかった女。だが、横になり、俺が入ってきた事にも気づかない。
「寝てんのか？」
そっと近づきながら耳を澄ませると、規則的な寝息が聞こえた。部屋の暗さにも目が慣れてきて、目視でも寝てる事が確認出来た。起こさないよう、そっと頬に触れる。温かくて柔らかい。任務を早く終わらせてきたが、寝てんなら仕方ねぇ。こいつも任務とかで疲れているんだろう。
「……また来る。」
額に軽くキスをおとし、ベッドから離れる。会えたけど、会えなかった。起きてもあいつは、俺がいた事なんて知らないんだろ。その寂しさが心を絞めていく。息苦しくて、酸素を取り込もうと多めに吸っても、忘れさせまいと一定の量以上は受け付けてくれない。
―――……いつからあいつに溺れてた？
今までこんな事はなかった。寂しい、と一緒に居て感じた事はなかった。……あぁ、そうか。起きてないと、こんなにも一方通行なんだな。あいつがどこか遠くに行ってる感じがしてならない。言葉を交わさないだけで、こんなにも寂しくなるもんなんだな。夜に来るんじゃなかった。けど、陽が出ていないこの時間が、俺をこんな風にしたのが悪い。
「……天馬？」
ドアに手をかけようとした時、ずっと聞きたかった声が聞こえた。
「あ、ごっ、ごめん！寝ちゃってた……！」
寝起きにも関わらず、慌てて俺の元へと駆け寄ってくる。
「ごめん……気づかなかった……。」
「そんだけ疲れてんだろ。」
「……うん、まぁ。」
「…………なら、寝てろよ。」
「うん……。……あっ、あのねっ！」
再びドアに手をかけようとした時、服の端が掴まれた。行かせたくないのか、少しでも動くと引っ張られる。
「い、……一緒にっ、寝よ……？」
「…………………。」
「あっ、えっと、……嫌なら、大丈夫……。」
言い終わったと同時に、服を掴んでいた手が離れた。俺はその手を勢いよく掴み、自分の方へと身体ごと抱き寄せた。
「……俺がそんな事思うかよ。んん？ずっと我慢してたんだぜ。」
*20170603
長い間書いてなかったのでリハビリ。
お待たせ！
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Aris - 天馬の感情がとても可愛いかったです( ^ω^ ) (2021年5月17日 22時) (
レス) id: 07b3866fc0 (このIDを非表示/違反報告)
藤田(プロフ) - 紅兎さん» 紅兎さんありがとうございます(´；д；｀) 以前よりも遅くなってしまいますが更新がんばります！ (2019年12月4日 22時) (レス) id: dd4451f660 (このIDを非表示/違反報告)
紅兎(プロフ) - 主さまのペースで更新頑張ってください！いつまでも待ってます！ (2019年12月1日 14時) (レス) id: 83a25d3fd1 (このIDを非表示/違反報告)
藤田(プロフ) - 夜桜さん» 夜桜さん、コメントありがとうございます。消化頑張ります＞＜ かなり不定期な更新ですが、気長にお待ちいただければと思います！ (2017年12月16日 15時) (レス) id: ec78dea903 (このIDを非表示/違反報告)
夜桜 - 初めまして！とっても良かったです！リクエストの消化頑張ってください！更新待ってます！ (2017年12月12日 15時) (レス) id: e7a9357e65 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：藤田 | 作成日時：2017年1月17日 23時
