斑鳩士門 ページ1
「おい。」
聞き慣れた声に振り返ると彼がいた。赤くツンツンとした髪。少し不機嫌そうな感じ。そして、ヘッドフォン。幼馴染みの斑鳩士門だ。
「……いい加減名前で呼んでよ。何年幼馴染みやってると思ってんの。」
「１０年以上。」
「分かってんなら名前くらい呼べるでしょ。」
彼は私の名前を呼ばない。初めて会ったときからそうだ。ちゃんと私の漢字も読みも伝えたのに呼ばれた試しがない。私は彼の名前を会った日から事ある毎に呼んでいるというのに、彼は１０年以上も私の名前を呼んだことがない、１度も。…ここまできたら嫌われてるんじゃないの私。第一印象悪すぎたの？ありきたりな自己紹介がお気に召さなかったの？
「……名前も呼べないくらい嫌なら話しかけなきゃいいのに…。」
「…おい。」
心の中で言ったつもりが何故か声に出てしまっていた。彼を見て、さっきよりも不機嫌そうな感じが増したのは言うまでもない。というより、不機嫌そのもの。あぁ…どんどん眉間に皺が寄っていく…。って、不機嫌っていうか怒ってるよね？ゆっくりと私に歩み寄り、距離を詰めた。
「な、なに…。」
「そんな風に思ってたのか？」
「そんな風にって……。…そう、思うしかないじゃん…。誰だってそう思っちゃうよ。」
「……………。」
私の言葉を聞いたあと、彼は俯いて黙ってしまった。彼が黙ってしまうと、本当に嫌だったのでは？と最悪の考えが消えない。こんなことになるならこんな話するんじゃなかった。数分前に戻りたい。
「………すまなかった。」
心の中で大後悔中の私に、彼は小声で言った。
「……別に、嫌だとか思ったことは１度も…ない…。ただ……あの、………。」
もごもごと喋る彼。普段からは全く想像も出来ない。寧ろ誰が想像出来るだろうか。俯いたままの彼の耳は、赤い気がする。髪の色より赤いのではないだろうか。
「…………っ！……好きなやつの名前……っ、簡単に呼べるかよ……！」
勢いよく上げた彼の顔は茹でダコ状態で、言い終わったあと、手で口元を隠し視線を逸らされてしまった。私はというと、彼の遠回しの告白に、彼以上に茹で上がってしまっていた。
…私は、好きな人の名前……沢山呼びたいタイプなんだけどな…。
気づいてるの？…士門。
*20170117
*20170118 修正
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Aris - 天馬の感情がとても可愛いかったです( ^ω^ ) (2021年5月17日 22時) (
レス) id: 07b3866fc0 (このIDを非表示/違反報告)
藤田(プロフ) - 紅兎さん» 紅兎さんありがとうございます(´；д；｀) 以前よりも遅くなってしまいますが更新がんばります！ (2019年12月4日 22時) (レス) id: dd4451f660 (このIDを非表示/違反報告)
紅兎(プロフ) - 主さまのペースで更新頑張ってください！いつまでも待ってます！ (2019年12月1日 14時) (レス) id: 83a25d3fd1 (このIDを非表示/違反報告)
藤田(プロフ) - 夜桜さん» 夜桜さん、コメントありがとうございます。消化頑張ります＞＜ かなり不定期な更新ですが、気長にお待ちいただければと思います！ (2017年12月16日 15時) (レス) id: ec78dea903 (このIDを非表示/違反報告)
夜桜 - 初めまして！とっても良かったです！リクエストの消化頑張ってください！更新待ってます！ (2017年12月12日 15時) (レス) id: e7a9357e65 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：藤田 | 作成日時：2017年1月17日 23時
