拗らせ恋。【登坂広臣】１ (ページ10)

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「...」

『...』

なんだろう。

この絶妙な空気感。

居心地が悪いわけではないが、つまらない女だと思われるかもしれないと話題を探す。

「そういえばさ」

『は、はい！』

まさかの登坂さんに先陣を切られる。

登坂さんは私がいる方の窓に近づき、そのまま窓にひじをついた。

距離わずか数センチ。

自分の心臓の音が聴こえるんじゃないか、ってくらいドキドキしてしまっている。

『あのー...？』

「...うん、やっぱいいや」

『へ、』

なんって男なの。

気になる切り方をされて困り果てる私と、そんな私を見て笑う登坂さん。

「顔真っ赤」

『...ちょっと、笑うのやめてくださいよ...』

「んふふ」

笑い方は可愛いのだが、完全に私で遊んでいるのが見て取れた。

でもまぁ、される相手によっては悪くないな、と。

「てか、さっきから右のボタン取れてるよ」

『え、うわ、ほんとだ....あ、さっき言おうとしたのってそれですか？』

ボタンを気にしながら言うと、登坂さんはどうだろね？とニヤりと笑う。

少し意地悪だが、そんな一面にもドキドキする。

きっとこれ以上は、深くなれないのになー。なんて思いながらも、この瞬間を精一杯楽しむことにした。