拗らせ恋。【登坂広臣】１ (ページ19)

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. hiroomi side

＂親交を深める＂かー、

我ながらいい口実かもしれない。

本当は、もっとAのこと知りたいから...なんて言ったら、どう思われるだろう。

...キスしたくせに、それは最低か。

彼女の香りがする部屋にいながら、悶々とそんなことを考えている。

...いや、もしかしてこの匂い。俺の香水？

「なんかここ、いい匂いするね。俺の好きな匂い」

『...あー...』

急に顔を真っ赤にしたと思えば、口元を袖で隠す仕草を見せる。

萌え袖で、かわいい。

「もしかして、俺の香水？」

『...』

「ふはっ、こんなとこで、急にファンっぽい」

『だから、最初からファンですってば...』

＂最初からファン＂という言葉に、無性に嬉しくなる。

そして今の赤面しながら俯く彼女には、クールなんて言葉は似合わなかった。

『あ、何か飲み物持ってくるんで、そこで待っててください』

「いいよ、気ぃ使わなくて」

『いやいや、使いますよ。ボーカルは喉が大事なんですし』

そう言うとそそくさと下の階に降りていった。

ボーカルは喉が大事、ね。

それ、隆二の前でも同じこと言うじゃん。となぜか隆二に対抗心。

とりあえず、言われた通り大人しく待ってようと思ったけど、ベッド近くの写真が気になってしょうがない。

...ちょっとだけ覗いてみよう。