拗らせ恋。【登坂広臣】１ (ページ33)

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泣き疲れた。

なんで私はあんな人と出会ってしまったのだろう。

だが＂出会わなければよかった＂と思えないのは、惚れた弱み、というやつ。

もう、戻れないんだ。

ﾋﾟﾝﾎﾟｰﾝ

突然のチャイムに、玄関に居座ったままの私はびっくりした。

こんなときにでも

思い浮かぶのは、彼の姿。

「いるわけないのに、」

そう悪態をつき、泣き疲れた目をしていることもどうでもよくて玄関を開けた。

「...ごめん、俺」

一瞬、理解できなかった。

だが気づけば玄関のドアは閉まっていて、中には登坂さんがいる。

そして明らかさっきまで泣いてましたみたいな自分と、登坂さんの珍しい、余裕のない表情。

少し髪が汗ばんでいて、わざわざ走ってきたのかと余計な思考を巡らせる。

「泣かせた、の、俺だよね。ごめん」

「...」

「誤解、解かせてほしい」

「...」

何を話せばいいのか分からない。

私って、いつも登坂さんとどんな会話してたんだっけ。

「美奈子から、付き合ってるって聞いた？」

聞きたくない。

登坂さんの口から、その名前を。

「...なんで、」

「A、聞いて」

「何も...聞きたくない」

つい強く当たってしまった、と一瞬頭が冷えた頃にはもう遅い。

どうして、あなたがそんな切ない顔するの？

泣きたいのはこっちなのに。

なお腕を離そうとしない登坂さんは、私の目を捉えたままだ。

「たしかに、俺と美奈子の間に、何も無かったって言ったら嘘になる」

「っ、関係ない話です。私には」

「じゃあ、なんで泣いてんの」

ほら、そうやって。

そうやってまた、紡ごうとする。

登坂さんは、私をどうしたいの？