君の背中 (ページ9)

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でも、その2週間後私が作業室から出ると、前に黒い塊がいた。

「え、人…？」

寝てるっぽい。

ここはスルーすべき…？

でも、私専用の作業室の前にいるってことは、私に用事があったってことだよね…
ここが私の部屋だって知ってる人も少ないし…

この時、私の頭からはあなたの事なんて消し去っていたから、この寝息をたてている黒い塊があなただなんて思いもしてなかった。

「すいません…起きてください…」

「ん…」

少し顔が見えて、そこで私はこれが朝光だってことが分かった。

『あ、さひ…』

『あ…寝てた笑笑』

あなたは私に笑いを誘うようにニコニコと笑っていた。
あの時と変わらない笑顔。

でも、私は笑えなかった。

『A、練習終わった？』

長い間会っていなかったはずなのに、あの頃のように話すあなた。

一瞬私もあの時に戻りたくなったけど、
その気持ちを抑え込んだ。
あなたに迷惑はかけたくない。

『終わりましたけど、何か用ですか？』

『なんで敬語なん？おかしくない？笑』

笑ってくれてるけど、その顔は少し私には怖く見えた。

まるで、無理矢理にでも私をあの頃に引き戻そうとするような目。

『ここではそうしないといけないと思うので…』

『なんで？幼なじみやん。』

あぁ、幼なじみ。
そう。私達はただの幼なじみ。

『幼なじみだからってタメ口で話す必要ありますか？』

『ごめん、じゃあせめて会社の外だけでも敬語やめてほしい。』

会社の外？
どうせ会社以外で会うつもりはない。

だからしょうがなく
『分かりました。』
と答えた。