悪？…これは”正義”だよ (ページ6)

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＃５ページ6

久しぶりに、夢を見た。

ここに来て、初めて。

あれは、そう…雨の降る、蒸し暑い日だった。

個性が発動した。

その時、たまたま持っていたぬいぐるみが

溶けて地面に落ちた瞬間がスローモーションに見えた。

目の前を見ると、両親の真っ黒の瞳があった。

「ちが…これは……と、さん？…………かあ、さん？」

２人の瞳には、僕は映っていなかった。

ただ、夜の闇のように暗いだけ。

すると急に父さんは、僕の手を力強く掴んできた。

「痛いっ、父さん、止めてよ！」

「五月蠅い！黙れ！！」

僕の事を見向きもせず、引っ張っていく父さんが、怖かった。

悪者よりも、お化けよりも、怖かった。

「ったい！…何するの？……父さん！！」

父さんは無言で僕の事を蔵の中に放り投げた。

そして、重たい大きな扉を閉めた。

「ねぇ！父さん！！父さん！？出してよ！！」

……何で？

良い個性じゃないと父さんや母さんは見てくれないの？

毒だから、イラナイ子なの？

……そんなの、可笑しいよ。

何で？

僕、父さんと母さんの子じゃないの？

気が付くと、僕の足の周りには紫色の沼のようなものが広がっていて、

蔵の中にあるものをどんどん溶かしていた。

「こんな世の中、全部壊れちゃえば良いんだ…………」