悪？…これは”正義”だよ (ページ12)

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＃１２ページ12

ヴィランは”悪役”。

ヒーローが”主役”。

いつもの事だろ？……もう、慣れた。

僕は左手の手のひらに爪が食い込むくらい、

強く握りしめ、後ろに隠した。

「……父さん、母さん…、姉さん」

あの日、手にかけてしまった唯一の血縁者。

まぁ、正直居ないほうが助かる。

「”アイツ”を……逃がすんじゃなかったなぁー」

誤って、母さんと姉さんを殺した。

父さんは…明確な悪意を持って…………殺意を持って殺した。

…………この、”左手”で。

「……荼毘くん、頼みがあるんだけど…」

「ん？」

「よし、ピッタリだな」

「ありがと」

左手にはめられたのは、革製の手袋。

昔、荼毘くんが使っていたものらしい。

「お古だけど、これで良いのか？」

「うん、これが良い」

右手の指先で、手袋を撫でる。

今まで、氷のように冷たかった左手は、

炎に当たったみたいに、ほんのりと…

温かかった。

「僕、荼毘くん好きだな」

「嬉しいこと言ってくれるなぁ」

荼毘くんは、僕の頭を力強く撫でた。

その手のひらは、やっぱり…

温かかった。