自室で〇〇を叫ぶ ページ5
それは突然だった。
*
リビングで寛いでいた時、ふと思い付いた様にイースが聞いた。
「Aってさ、由来なんなの?」
「え、名前の?」
「うん」
由来、かぁ。
「日本さんにつけてもらったんだよ」
「……日本に?」
心なしかイースが眉を潜めた様な気がしたけれど、良く見れば相変わらずの無表情だったので、思い違いかと思い、私は触れなかった。
「そう。私が頼んだの」
以前日本には長期滞在していたことは既に話したが、どうも私は当時日本の美的センスにはまってしまったのだ。
そのため、日本さんにちゃんとした人名を求めたのだ。
その時に日本さんから頂いたのが、このAという名前。「直感ですけど……そんな感じがします」と言われ、嬉しさで夜眠れなかったのが思い出である。
「Aが?日本に?頼んだ?」
「えっ、何かまずいこと言った?」
ちょこっと御立腹のようだ。
「A……日本に名付けてもらってたんだ……」
「そうだよ。……割と気に入ってるんだけど」
「確かに、Aっぽいもんね」
悔しいけど。
はっきりと聞こえた。
本人は無自覚っぽいが、声は大きめだった。
一体イースは何に嫉妬――というか怒っているのだろう。皆目検討が付かない。
「イース?どうしたのさ、最近日本さんと何かあったの?」
「日本とは特にないけど、何で?」
「いや、イース怒ってる――」
からさ、と言おうとした。
が、イースが途端に顔を真っ赤にしたから、私は呆然とした。
え、特に恥ずかしいこと言ってないのに。
……ここ最近のイース変だよ?
なんて言える訳もなく、ただただ時が過ぎていく。
「ねぇ、イース、」
名前を呼ぶと、イースは私の右手を掴んだ。結構力が入っていて、痛い。
「イース痛い、」
「……余所見、しないで」
つ、と唇にあたる乾いていない赤い何か。
それがキスだと言うことは瞬時に理解した。
触れた唇に指先を当てる。
既に感触は無かった。残念とも安堵とも取れない、不可思議な気分が胸中を埋め尽くした。
「イース?え、いきなり何?」
「は?……わ、あぁああ!忘れて、忘れて!何でもないから!うわああああ」
イースはトマトの様になりながら、階段を駆け上がっていった。……足速っ。
独り残された私だったが、ふと、もう一度指先を唇に当てた。
「……ファースト、盗られちゃった」
*
「
自分の失態を自室で叫んだ。
今日の国歌
Phleng Chat(タイ)
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ディア - 初めまして、楽しく読ませてもらいました。更新頑張ってください! (2022年3月15日 16時) (レス) @page34 id: 8032fbc3aa (このIDを非表示/違反報告)
葵 - 初めまして!アイス君可愛いです! (2019年9月8日 23時) (レス) id: 52626f1862 (このIDを非表示/違反報告)
ゆーみやン@JustinB好き(プロフ) - はじめまして!このお話大好きです!! 更新応援しています!ヾ(*´∀`*)ノ (2019年9月8日 16時) (レス) id: cef1a7a657 (このIDを非表示/違反報告)
はとのぱ(プロフ) - まい苺さん» ほんとに全然更新できてなくてごめんなさい……!ありがとうございます、励みになります……!! (2019年9月8日 11時) (レス) id: 218c7caaed (このIDを非表示/違反報告)
まい苺(プロフ) - お久しぶりです。 今年、私は受験生なのでなかなか見にこれませんが。更新されたら絶対見に来ます! この話が大好きなので更新待ってます これからも更新頑張ってください! ずっと応援しています (2019年2月17日 20時) (レス) id: 09444efaa4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はとのぱ | 作者ホームページ:http://m-pe.tv/u/?littlepigeon4
作成日時:2017年2月23日 23時