Once upon a time5 ページ28
「まさか、と思ったよ」
「本当Aって運悪いっていうか……辛い目にばっか遭ってるっていうか」
「でも今はイースに逢えてるから幸せ者だよ」
「うるっさい」
「怒ってても美形だしね」
「も、もう。ばか」
*
「ねぇ、アーサー?あれは、彼女の運命だったの?」
「……」
アーサーは私と目を合わせようとはしなかった。多分、後悔とか、そういう類いの気持ちで目を逸らしているのではない。
彼は──もう既に受け入れているんだ。
だから、私に説明が出来ないんだろう。何故彼女が火刑に処されなければならなかったのか。
私は、全てを受け入れる海であった筈なのに。
──ちょっと、彼女をどうするんだ!
──Ms.Marissaには関係のないことです。
──私は彼女の世話係だ。イギリスから命を受けているんだぞ。勝手に連れて行くのが許されると思ってるのか?
──我々も祖国直々の連行命令なのです。
──は?
どこが魔女だと言うんだ。彼女は立派な聖女だった。話してきたから判る。幾らアーサーからの心を開かせるという命令だとしても、同じ“少女”として話をしていたのだ。話を通して欲しかった。
──貴女が全てを受け入れるのなら、私だって同じこと。心配しないで。私は大丈夫。
最期に優しい嘘まで吐いて。彼女の方がよっぽど世界を包む海じゃないか。
私はもう、国と人間と関わるのは無理かもしれない。こんなにも非情なことに、私はアーサーのように耐えることなんて出来ない。
「どうして英雄は皆残酷に消されるのさ。彼女はまだ19歳で……それも遺体も残さずに」
「海だと言うから誰に対しても平等だと思って捕虜の世話をさせたのに、案外感情移入するんだな、お前って」
「……それ本気で言ってる訳」
今なら、それが苦し紛れの彼なりの場繋ぎのつもりだったのは判る。でも、当時の私にそれを求めたのは失敗だったのだ。私はアーサー程人との違いを認識し、別個のものとして考えることは出来なかったのだ。
「ちょっともう……ここには居られないかな。今までありがとうね。イングランド」
「っ、マリー」
「私はもうイングランドのマリッサじゃないから。また数百年でもしたら会おう」
そう言って、私は宛もないのにイギリスを発った。最後、アーサーが死ぬ程悔しそうに俯いて拳を握り締めたのを私は見ることはなかった。
今まで、楽しかったよ。アーサー。
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今日の国歌
Phleng Chat(タイ)
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ディア - 初めまして、楽しく読ませてもらいました。更新頑張ってください! (2022年3月15日 16時) (レス) @page34 id: 8032fbc3aa (このIDを非表示/違反報告)
葵 - 初めまして!アイス君可愛いです! (2019年9月8日 23時) (レス) id: 52626f1862 (このIDを非表示/違反報告)
ゆーみやン@JustinB好き(プロフ) - はじめまして!このお話大好きです!! 更新応援しています!ヾ(*´∀`*)ノ (2019年9月8日 16時) (レス) id: cef1a7a657 (このIDを非表示/違反報告)
はとのぱ(プロフ) - まい苺さん» ほんとに全然更新できてなくてごめんなさい……!ありがとうございます、励みになります……!! (2019年9月8日 11時) (レス) id: 218c7caaed (このIDを非表示/違反報告)
まい苺(プロフ) - お久しぶりです。 今年、私は受験生なのでなかなか見にこれませんが。更新されたら絶対見に来ます! この話が大好きなので更新待ってます これからも更新頑張ってください! ずっと応援しています (2019年2月17日 20時) (レス) id: 09444efaa4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はとのぱ | 作者ホームページ:http://m-pe.tv/u/?littlepigeon4
作成日時:2017年2月23日 23時