大事にするってなによ(それぞれの大切0) ページ31
今回から基本的に2019年夏頃からのお話が続きます。時系列飛ぶときはわかるように書くようにしますが、それ以外は2019年夏頃からの時系列順だと思ってください。
これは、「距離感」「一緒に住もうか」「きみと恋の話」のあとくらいの話です。
シリーズというか、話としてずっと繋がっているのでひとつひとつは消化不良になるかもしれませんが、お付き合いいただければと思います。
＿＿＿＿＿＿
突然手を取られたので、驚いた。
「えっ、ちょ」
「行こう」
普段は溶けてる声色が、しっかり固い音を出す。引っ張る腕に連れられて走り出す。ネオンを背に夜の住宅街に。
近江は思ったより早く、思ったより長く走った。足元に目をやるといくらか高いヒールを履いていてさすがやなと思う。ステージで鍛えられた脚はそう簡単には潰れんらしい。こいつの前で足元を気遣うなんてばかばかしい。
はぁっ、はぁっ
苦しげな息遣いが続くので引かれていた腕をくんとこちらから引っ張る。そのときになってようやく近江が俺を振り向いた。もうどこにいるかわからない。暗渠が解かれ姿を見せた川縁とビルの間で立ち止まる。
「なに？どうしたん」
尋ねると、掴まれたままの腕をぎゅっと握られた。
「あんなの、我慢しやんでいい」
絞り出すような声。ビルの裏手は街灯の光も届かないから、顔が見えない。荒い呼吸を整えて、声を絞り出して、我慢しなくていいって＿＿
なんのことやろ。さっき後ろにいた子たちのことか。
「写真のこと？あんなんいつものことやって」
盗撮なんて、正直気にしたほうが負けや。もうずっと前から…そんなの近江やってわかってると思うけど。
「違う」
また固い声がした。短く発した後で、きつく口を閉じる。
暗闇に目が慣れてきてだんだんと顔が見えるようになってきた。大きく開かれた瞳が強い視線で俺を見据えている。
「違う。そうやない」
…じゃあ、なに。
「れぇん」
「ん？」
その目に、光る何かが煌めいた気がして驚いた。
驚いて、狼狽えた。なに。
「れぇん、なんも、気にしやんでいい」
潤んだ瞳から零れ落ちた瞬間、それがなにか、はっきりして。なんで泣いてるのか、全然わからへん。こんな、ことで、なんて思ったら、怒られるだろうか。
「…うん」
迷って、迷って、ようやく返事をする。
「うん」
近江からはまた固い声がかえって、なにかを飲み込むように小さく頷いた。掴まれたままだった腕がもう一度強く握られて、それから離れていった。
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れわ(プロフ) - ゆきさん» ゆきさん、お返事も更新も遅くなってしまってすみません。言葉で反応を下さって本当にありがとうございますとても嬉しいです。読み返してくれるなんて幸せです。これから最年長さんとのお話も続けられたらと思っているのでぜひ読んでいってください。本当にありがとう。 (2021年8月3日 23時) (
レス) id: bd6b5a81fd (このIDを非表示/違反報告)
ゆき - 凄く好きなお話で一気に最後まで読ませて頂きました、言葉使いが凄く好きで心がキュッてなったり切なくなったり幸せな時間でした特に4thの後半が凄く好きでもう一度読み返してこようと思います、素敵な作品をありがとうございます！ (2021年7月22日 23時) (レス) id: db191b2c1e (このIDを非表示/違反報告)
れわ(プロフ) - やしのみさん» やしのみさん！コメントありがとうございます。本当にうれしいです。本当に本当にうれしいです。これからも、大切に書いていこうと思えました。ことばでおくってくださって、本当にありがとうございました。よければまた読んでいってください。 (2021年5月12日 1時) (レス) id: bd6b5a81fd (このIDを非表示/違反報告)
やしのみ(プロフ) - 評価が一度しかできないのが残念なくらい、何度でも★10を押したい大好きなお話です。丁寧に大切に紡がれていくお話に心癒されています。ありがとうございます。 (2021年5月9日 15時) (レス) id: 2d633d615a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：れわ | 作成日時：2021年1月8日 20時
