花のち晴れ〜another story〜2

冷静と余裕.Haruto ページ19

*



晴「ここかっ！」



警備員と捜索してようやく、

江戸川と馳が閉じ込められていた場所を特定できた。




扉を勢いよく開けると

江戸川を守るように立っていた馳のいつかぶりの鋭い眼差しに睨み付けられる。





音「神楽木！よかった………助かった」



晴「大丈夫だったか？江戸川」



音「うん、大丈夫」




思っていたより
元気な返答に驚きつつも

俺の意識は
一ノ瀬が想いをよせる………馳天馬。





天馬「神楽木

お前は何度音を危険な目にあわせれば気がすむ？」




音「違うよ天馬くん。神楽木は悪くない。

ねぇ、神楽木…Aは？」




天馬「A？」




"A"という名前に敏感に反応する馳。

その姿が見えないことに不安の色を見せている。




晴「…………一ノ瀬は、いない」



音「いないって、どこに！まさか愛莉さんに何か？」




ここで
お前のせいだよ、馳天馬。
そう言えたなら
どんなにいいだろう。


言えるわけがないことを考えては
俯いて、拳を握りしめるだけ。


そんな俺の胸ぐらを
馳は思い切り掴んだ。




天馬「Aはどこにいるっ？

危険な目に合ってるんじゃないのか！！」





何なんだよ。

江戸川の時は冷静に話すくせして

一ノ瀬のこととなるとこんなにも余裕がなくなるのは可笑しくないか？






晴「………アイツは無事だ。


俺に任せろ。


馳は江戸川を頼む………………」




力強く掴んでいる馳の手を

力強く掴んで離す。




馳がこんなにも
一ノ瀬を気にかけるのも無理はない。


一緒に暮らしてきて
馳にとって一ノ瀬はもう大切な人の一人に違いないのだから。



でも、その優しさが
一ノ瀬の心を掴んでいるのだとしたら…………

一ノ瀬はずっと苦しんだままだ。






天馬「俺が行く。

場所を教えてくれ。早く！」




晴「落ち着け、馳。

江戸川は馳の婚約者だろ。」





天馬「でもAはっ…………………晴「いいから」





涙の原因が
また泣かせにいってどうするんだよ。





晴「悪かったな」






それだけ言って俺は

一ノ瀬を探すために駆け出した。

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