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ずっと欲しくて欲しくてたまらなくて、心の底から焦がれていたものを目の前に差し出されたら、人はどうなるんだろう。
その答えが、今わかった。
嬉しさとか、驚きとかよりも先に、不安が心の中を占めていた。
本当に受け取ってもいいのか。この先、手元から離れてしまわないか。
「でも、レオナさまは第二王子で、わたしは唯の侍女で、」
「『唯の侍女』じゃない。誰よりも賢くて質の高い教養を持った、可愛い俺の猫だ」
きっぱりと否定する彼がわたしを見つめて恥じらいもせず言うものだから、こちらが気恥ずかしくなってくる。
「…わたしよりもずっと素敵な女性は、他にもたくさん居ます」
「そうだな、お前よりも良い女はこの世に掃いて捨てるほどいるだろうよ」
だがな、とわたしの頬に手を添える彼の少し困ったような笑顔に、今までに経験したことのない痛みが胸に差し込む。
「俺が添い遂げたいと思える女は、お前以外の何者でもないんだよ」
あ、ダメだ。泣きそう。
そう思ったときにはもう遅くて、涙腺が一気に緩み、ボロボロとみっともなく泣き出してしまった。
「っ、う…」
「おい、泣くな」
「っだ、って…ぇ…」
恋だって知らない。
親愛以外の愛に触れたことなんて、もちろんない。
容姿が人一倍整っているわけでも、優れた魔法を使えるわけでも何でもない。
そのくせ、誰よりも美しくて、強かで、聡明な獅子に恋焦がれてしまった。
こんなに愚かな猫の物語は、本でさえ読んだことなんかない。
なのに、その獅子も自分に焦がれていただなんて。
なんて滑稽で、世間知らずで、幼くて、幸せな話なんだろう。
「もう、離れられないな。お互い」
笑いながら、レオナさまがわたしの涙を拭う。
「ひどい人」
「良いだろ、お前も俺のこと好きなんだから」
は、とわたしの言葉を鼻で笑って流す彼の台詞は、否定できないものだからこそ、心臓がかき乱される。
「でも、またレオナさまに危険が及ぶようなことがあったら…どうするんですか」
「ンなこと、もう起こさねぇよ。王族相手に喧嘩売ったんだ、お土産付きで返してやらないと道理じゃない。明日中に解決させてやる」
悪い笑顔を浮かべて、そう言い放ったレオナさまに苦笑する。
そういえば、この人はこんな人だったな。
「にしても…恋人が違う奴の話をしてるのは随分妬けるなァ？」
こいびと。
彼の口から出たその言葉に、一気に顔に熱が集まった。
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麗奈 - とても読んでいて、キュンキュンしました。レオナさんの優しさや独占欲嫉妬心、なにより溢れんばかりの愛情。これがとても伝わってきて、読み終わったとき、どうかこの二人が幸せになりますようにと、心から思わせてくれるような作品でした。 (2023年4月1日 19時) (
レス) @page34 id: 1d0df350f7 (このIDを非表示/違反報告)
candy - コメント失礼致します。ご作品拝見させていただきました！夢主とレオナの関係性を含んだ上でもどかしさだったり切なさだったり、でも甘かったりとても見ていて面白いなぁと思いました！それに何よりるり様の描く描写や世界観があまりに素敵で見入ってしまいました！ (2023年1月2日 2時) (レス) @page34 id: 3ec148aec7 (このIDを非表示/違反報告)
津城瑠生(プロフ) - コメント失礼します。文章の書き方が想像しやすくてすんなりと物語の世界に入っていきました。レオナさんの悲願と言ったらいいんでしょうか…、それが叶っていく過程がとても好きです。素敵なお話をありがとうございました。 (2022年11月21日 8時) (レス) id: 90b7e5739a (このIDを非表示/違反報告)
明理(プロフ) - 面白くてつい一気読みしてしまいました…！何度「ん"ｯ」ってなったことか…！！！久しぶりに満足できる甘々小説を読めました！ありがとうございました！！ (2022年5月31日 21時) (レス) @page34 id: 0be17a4bd3 (このIDを非表示/違反報告)
るり(プロフ) - もさん» もさんありがとうございます！こちらこそ最後まで読んでくださりありがとうございました！ (2022年1月22日 19時) (レス) id: 8e93effa05 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：るり | 作成日時：2020年8月2日 17時
