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その日の夜、『第二王子様への贈り物』の名目で送られてきたものの中に、またたび酒が入っていた。しかも、かなり上等の。
「そういえば、レオナさまは成人してらっしゃいましたね」
わたしの言葉に、彼も「ああ、酒も、何なら煙草だって嗜む程度には遊べる」と返してくる。
「お煙草…わたしは苦手ですねぇ」
あの煙の臭いがどうも好きになれない。それに、嗅ぐと鼻先が痒くなってくしゃみが止まらなくなってしまう。
「煙草は俺も好きじゃないな。煙の臭いが気に食わねぇ」
眉を寄せて言った彼に、今度は笑って
「お酒は？」
と聞いてみる。すると、悪戯っぽい笑顔で
「嫌いじゃない」
と答えが返ってきた。
「お飲みになりますか？」
そう言ってグラスを戸棚から出せば、レオナさまは愉快そうに目を細める。
「そうだな、一杯程度」
その返答にわたしも思わず笑みを浮かべ、ワインの栓を抜いた。
そのとき、一瞬鼻をかすめたアンモニア臭に眉を顰める。
これは、アルコールの臭いじゃない。
再び栓をして、ボトルのラベルを確認する。
ラベルそのものは、特に変哲のないまたたび酒のもの。
そこで、瓶を見てようやく気づく。
無色透明なガラスではなく、褐色のガラスで作られた瓶。
これは、おそらく…というか、絶対。
「おい、どうした」
レオナさまが、怪訝な顔をして、わたしに声をかけた。
彼の方を向いたわたしの顔は、引きつっていなかっただろうか。
「これ…お酒じゃありません。毒、です」
わたしの言葉に、一瞬目を見開いたあと、苦虫を噛み潰したような表情をしたレオナさま。
「またかよ」
彼の声に、なんだか泣きそうになってしまう。
自分を傷付けようとするものを『また』なんて言葉で済ませないで。
そんなわたしの内心なんか知らずに、レオナさまはわたしに問う。
「毒の種類は？」
「おそらく、高濃度のシアン化カリウム…いわゆる青酸カリウムだと思います」
言わずと知れた猛毒だ。
明確な殺意を向けられたレオナさま本人よりもずっと怯えて怖がっている自分が、何よりも情けなかった。
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麗奈 - とても読んでいて、キュンキュンしました。レオナさんの優しさや独占欲嫉妬心、なにより溢れんばかりの愛情。これがとても伝わってきて、読み終わったとき、どうかこの二人が幸せになりますようにと、心から思わせてくれるような作品でした。 (2023年4月1日 19時) (
レス) @page34 id: 1d0df350f7 (このIDを非表示/違反報告)
candy - コメント失礼致します。ご作品拝見させていただきました！夢主とレオナの関係性を含んだ上でもどかしさだったり切なさだったり、でも甘かったりとても見ていて面白いなぁと思いました！それに何よりるり様の描く描写や世界観があまりに素敵で見入ってしまいました！ (2023年1月2日 2時) (レス) @page34 id: 3ec148aec7 (このIDを非表示/違反報告)
津城瑠生(プロフ) - コメント失礼します。文章の書き方が想像しやすくてすんなりと物語の世界に入っていきました。レオナさんの悲願と言ったらいいんでしょうか…、それが叶っていく過程がとても好きです。素敵なお話をありがとうございました。 (2022年11月21日 8時) (レス) id: 90b7e5739a (このIDを非表示/違反報告)
明理(プロフ) - 面白くてつい一気読みしてしまいました…！何度「ん"ｯ」ってなったことか…！！！久しぶりに満足できる甘々小説を読めました！ありがとうございました！！ (2022年5月31日 21時) (レス) @page34 id: 0be17a4bd3 (このIDを非表示/違反報告)
るり(プロフ) - もさん» もさんありがとうございます！こちらこそ最後まで読んでくださりありがとうございました！ (2022年1月22日 19時) (レス) id: 8e93effa05 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：るり | 作成日時：2020年8月2日 17時
