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煌びやかで、豪奢で、美しいものに溢れた王宮。
けれど、そんな王宮も内情はかなり汚れている。
誰かが誰かの足を引っ張って蹴り落とそうと、そして自分が這い上がろうと躍起になっている。
(そんなこと、実際に働いてみないとわからないんだよなぁ)
洗濯物を取り込む侍女たちの井戸端会議を右から左に聞き流しながら、わたしも乾いた洗濯物の埃を払っていた。
「聞いた?財務大臣が再婚した話」
「どうせ金目当てでしょう?相手のお嬢さまもかわいそうだわ」
「そういえば、あの宰相…」
そういうドロドロとした話は聞くだけ耳に毒だし、なるべく耳に入れないようにはしているけれど、こんな近くで話されていたら嫌でも耳に入ってくる。
『今聞いた質問に全て正確に答えられるなら、お前は一国の宰相になることだってできる』
宰相、という言葉に不意に昨夜のレオナさまの事を思い出す。
(そうやって他人を蹴落としてまで、自分の地位を維持しようとする役職には就きたくないもの)
別に、人間性が、とか、助け合いが、とかいう綺麗事の話じゃない。
政治の世界に人情を持ち込んだら必ずと言っていいほど失敗する。そういう話はあの図書室でいくらでも読んだ。
ただ純粋に、疲れる。それだけ。
それにわたし、皇后の従者って地位に、本当に心底満足してるもの。これは紛れもなく事実。
息が詰まる話の場から早く抜け出して仕事を終わらせてしまいたい。
パン、パン、とシーツのシワを伸ばして籠に入れる。
これをリネン室に仕舞って、と頭の中で独り言を言ったところで、先輩の侍女に呼び止められた。
「Aー!!」
「はーい!」
シーツの入った籠を抱えながら彼女のところへ行くと、
「これもお願いできる?」
と少し申し訳なさそうな顔でまたひとつ、籠を手渡される。
「えっと、これは…」
男物のシャツ、上着。
使用人の服はここでは洗濯しないし、チェカさまのものにしてはあまりにも大きい。ファレナさまの服は皇帝付きの侍女が洗濯するはず。
「レオナさまのよ。あの方が帰ってくるとこうやって少し洗濯物の量が増えるでしょう?だからみんなで分担してるんだけれど…」
言葉尻を濁す彼女を見て、なんとなく察する。
『まぁ、帰ってきてらしたの?』
『ええ。チェカさまがあまりにも強請るものだから、って』
『恐ろしいわ…何かヘマでもしたら…』
数日前、偶然聞いた会話を思い出す。
この国は、第二王子を歓迎する気持ちがあまりにも少ないらしい。
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るり(プロフ) - ネイビーさん» はじめまして〜こちらこそそんなに褒めていただけて光栄です!ありがとうございます^ ^ネイビーさんをギュンギュン(笑)させられるようにわたしも頑張りますね!更新頑張ります! (2020年6月16日 8時) (レス) id: c451112bd1 (このIDを非表示/違反報告)
ネイビー - はじめまして!このような素晴らしい作品を書いて下さり、誠にありがとうございます。もう、もう、レオナさんかっこ良すぎて、キュンキュン通り越してギュンギュンでした!これからもずっと応援しています! (2020年6月16日 1時) (レス) id: a7f9a787f1 (このIDを非表示/違反報告)
るり(プロフ) - 誓雨さん» 誓雨さんありがとうございます〜!とても嬉しいです!そろそろ続編に移ろうかと考えているのでそちらでもよろしくお願いします。頑張りますね〜! (2020年6月15日 19時) (レス) id: c451112bd1 (このIDを非表示/違反報告)
誓雨(プロフ) - この小説ほんと好きです!レオナさんもカッコいいし夢主ちゃんも可愛いし……いつもキュンキュンしてます!更新頑張ってください! (2020年6月15日 19時) (レス) id: fc504e5c9b (このIDを非表示/違反報告)
るり(プロフ) - Aさん» ほ、ほんとだ…わざわざご指摘ありがとうございます!タイトル書き間違えてました…お手数かけてすみません…。頑張りますね! (2020年6月14日 23時) (レス) id: c451112bd1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:るり | 作成日時:2020年5月9日 23時