黒薔薇蝶の悪夢 ページ3
(語り手 黒薔薇蝶)
「…!」
どうしようもないトラウマと、どうしようもない恐怖を植え付けられたような感覚に思わず飛び起きてしまいました。
ここは…自室です。天井付きベッドを見てすぐにわかりました。ある程度は冷静に振る舞えますが、何せ顔には脂汗が頬を伝いシーツを握る手は汗ばんでおりました。それぐらい体に影響が出るほどの悪夢を見たということでしょうか…?
…
……なんだか、納得いくようないかないような。とりあえずこの恐怖は払拭しなければなりません、今日は会議も見学もないのでもう一眠りしようと柔らかな毛布を再び手繰り寄せ目を静かに閉じました。
悪夢を見た後は決まって浅い眠りが始まります、二度寝ということもあるのでしょうが。普段は聞こえない使用人が自室のドアを開けた音も。こちらに近付く足音も……??
浅い眠りについたアタシでも多少の思考回路は生きています。おかしい事にも気付きました。そもそも、ノック音が聞こえませんでした。そして、お決まりのお嬢様という呼び声も。使用人じゃないとすれば一体誰でしょう?お父様はまだ帰って来てないはず、考えられる可能性は
「持田!また悪戯しようとしてるでしょ、………う??」
ばっ!!っと飛び起きてアイツを吃驚させようてしたのです、驚いた顔が見たかった。しかし目の前にいたのは腐れ縁の片割れでも、サプライズで来たお父様でもなく。そっくりそのままのアタシが、そこには立っておりました。妙な胸騒ぎです、なぜか既視感がある。
アタシに気付かれたアタシ?は、大きな目を開かせて次の瞬間アタシの目の前から消えてしまいました。
…代わりに残っていたのは、可哀想な彼女だったのです。痩せこけて常に何かに怯える彼女はそのまま座り込んで。アタシはそんな震える彼女の背を黙って撫でておりました、それが正解な気がして。手に持つ赤黒いナイフに気付かぬまま。
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作者名:麗 | 作成日時:2022年1月19日 7時