子供は海へ舟は水ーその25 ページ19
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少しずつ慣れればいい
甲斐さんのその言葉を噛み締めて、一息ついて水面を見つめる。
さっきよりも幾分か楽だ。
(よく考えろ俺、今俺は浮き輪に捕まってるし隣には泳ぐの得意な平古場さんと甲斐さんがいるんだから。)
そう考えたらなんだか落ち着いてきて、水面をのぞき込んだままふっと笑ってしまった。
「なんか面白いもんでも見つかったか?」
そんな俺の様子を見て、平古場さんが同じように水面をのぞき込む。
「あ、そうじゃなくて…あんまり怖くなくなってきたなと思って。
でも、海なんだからなにか面白いものが見つかりそうですよね!」
そう言って平古場さんと一緒に海の奥を見ようとするが、深い海では底まで見えるわけもなく、漂う俺たちの足が見えるばかりだ。
「…まぁ、見つかるわけねーか。」
「海なら魚とか貝とか、簡単に見つかるのかと思ってました。」
「うちなーの海だったらそこら辺潜りゃいくらでも見つかるのによー。」
「ここは深いからしょうがないですね……って、どうしたんですか?甲斐さん。」
突然甲斐さんにちょんちょんと肩をつつかれる。
水面をのぞき込むのをやめてそちらを振り向くと、不思議そうな顔をした甲斐さんは海を見ながら首をかしげた。
「やったー何言ってるんば?深かったら潜ればいいだけやっし」
「えっ潜…!?深いですよ…!?」
唐突な発言に慌てて止めるも、甲斐さんは当たり前のように「いってくる!」と叫んで飛び込んでしまう。
「か、甲斐さんちょっと待っ…!」
「あーあ」
飛沫一つ立てずに海へと消えた甲斐さんはまるで、一度か二度水族館で見たイルカのようだった。
豪快にばっしゃーんと飛び込むのが正解じゃないんだな、とぼんやり考えながら平古場さんの方を見ると、やれやれと言わんばかりに笑われた。
「裕次郎が行くならわんも行ってくる」
「えっ平古場さん一人にしないで」
「大丈夫だって、すぐ帰ってくるから」
「平古場さん待っ…!!!」
言うが早いか、甲斐さんのように水面に消えてしまった平古場さん。
「え…一人?」
俺は浮き輪にしがみついて、無様に取り残されたのだ。
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木こりのコロポ(プロフ) - 第一部隊さん» コメントありがとうございます!本当に合宿編は終盤です…最後まで楽しんで貰えたらなによりです! (2019年1月17日 22時) (レス) id: 2e6823aea8 (このIDを非表示/違反報告)
第一部隊(プロフ) - ルドルフ可愛い...合宿が終わるの寂しいですね。更新頑張って下さい! (2019年1月12日 1時) (レス) id: 8a79432f79 (このIDを非表示/違反報告)
木こりのコロポ(プロフ) - 第一部隊さん» 久々の更新にも関わらず、コメントありがとうございます…!長い間ご迷惑をお掛けしましたが、今日から少しずつ更新できればと思います…! (2019年1月7日 23時) (レス) id: 2e6823aea8 (このIDを非表示/違反報告)
第一部隊(プロフ) - 久しぶりの更新!いつも更新楽しみにしています!これからも頑張って下さい! (2019年1月7日 19時) (レス) id: 8a79432f79 (このIDを非表示/違反報告)
木こりのコロポ(プロフ) - キャラメルさん» お返事が遅れてしまいすみません!コメントありがとうございます!そう言っていただけると書きがいがあります…!これからもよろしくお願いします! (2018年10月8日 17時) (レス) id: 2e6823aea8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:木こりのコロポ | 作成日時:2018年6月11日 21時