窮鼠なれど王を噛めーその11 ページ5
※幸村目線
大きな音を立てて扉が開き、中にいたのは観月とA。それはまだ当たり前のことだけど。
観月に両肩を支えられたAと、それに顔を近づけた観月。
「……俺達、Aが心配でね。」
ついてきちゃった、と軽く言えば観月の歯ぎしりが聞こえたような気がした。
ああほらやっぱり何かある。
「…君には、Aのマネージャーの先輩として頼っているんだけど。」
そう言って笑えば観月は体を直してこちらを向く。
「それは有難い事ですね。そのついでに…僕としては直属の先輩にもなりたい、なんて思い始めた頃ですが?」
やっぱり、あの流れでAと跡部の関係を聞き出そうなんて。おまけに俺に睨まれて切り返してくるなんて、観月も隅に置けないなぁと呑気に思いながらも俺は笑顔を崩さない。
「頼もしいね。でもさ、Aの先輩は俺達で事足りてるし、なによりも…」
そこで一息つけば観月が強く口を噤む。
「Aの先輩は、お前には荷が重いよ。」
俺の後ろでは真田達が観月の事を思い思いに見つめているんだろうけど、背中越しに分かるくらいの視線のキツさだ。
何もそんなに睨むことは無いのにと呆れながら、動かない観月に向かって続けた。
「Aには他人に言えないことが多いからさ、後は俺達に任せてよ。大丈夫だから。」
俺がそう言うと、観月は小さくため息を吐いてドアに手をかけて出ていった。
…マネージャーとしては優秀なのかな。Aが信頼しているから、仲良くしていることに危機感はないけど。でも秘密を共有されるのは駄目だ。普通の時なら簡単に教えないだろうけど、今や俺達に教えてくれた時の様に弱っている時なら簡単に聞き出せるからな…どうやって防いでいくべきか、
「幸村君、」
ブン太に声をかけられて、現実に引き戻される。ベッドに座ったままのAの周りに集まる皆の中で、Aの肩を軽く揺すったブン太は困り顔だ。
「Aが全然動かねぇ。何言っても大丈夫ですしか言わねぇし。足も震えてて立てないって。」
「……前途多難だな。」
俺もAに何か声をかけようと近づいたその時、
「二人にしてくれないか」
真田が静かにそう言った。
正直驚いて、真田の顔を見たが表情は至って普通だ。
「え、いいの?任せて?」
「ああ、大丈夫だ。だから」
また「二人にしてくれないか」と繰り返した声はありえないほど落ち着いていて、俺達は黙って頷くしかなかった。
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木こりのコロポ(プロフ) - 日吉和菓子2円さん» コメントありがとうございます!これからもよろしくお願いします! (2018年4月30日 0時) (レス) id: 43368e3037 (このIDを非表示/違反報告)
日吉和菓子2円 - ルドルフ組が可愛かったです! (2018年4月29日 22時) (レス) id: 9521c565b3 (このIDを非表示/違反報告)
木こりのコロポ(プロフ) - 第一部隊さん» コメントありがとうございます!ルドルフの中だと淳が好きなので、かなり淳との会話が多くなってしまったかなと思います…!お気に召して貰えたならなによりです! (2018年4月29日 19時) (レス) id: 43368e3037 (このIDを非表示/違反報告)
第一部隊(プロフ) - ルドルフかわいかったです!家族設定面白い!ありがとうございました! (2018年4月29日 18時) (レス) id: 91bd124fa4 (このIDを非表示/違反報告)
木こりのコロポ(プロフ) - 暁月さん» ご指摘ありがとうございます!訂正しました! (2018年4月29日 13時) (レス) id: 43368e3037 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:木こりのコロポ | 作成日時:2018年4月14日 8時