世話焼きも手を焼くーその14 ページ22
ー
「ゲームセット！」
幸村部長の声が頭に響く。
俺は膝から崩れ落ちて、大きく息を吐いた。
「勝っ、た……ぁ……！」
ラケットから手を離し、耳を塞いで耳鳴りをやり過ごす。
まさか耳を澄ます事がこんなにキツいとは思わなかった。全部の音がうるさくて、頭がガンガンした。
俺は立ち尽くしている越前君をちらりと見る。
俯いて息を整えているその人に、もう試合前のような怖くて生意気という印象を持つことは出来なかった。
「…えちぜん、くん…」
俺は立ち上がって、握手をしようとネット近くまで歩み寄った。
片手を出して、少し考えてからもう片方の手も差し出す。…なんだか、片手で握手していい人に見えなくて。
「試合、してくれてありがと…」
そう言って手を出したまま待ってると、越前君は応えてくれるつもりなのかこちらに歩き出す。
よかった、握手はしてくれるみたいだ。帽子のつばに手をかけているせいで表情は見えないが、俺はちょっとほっとした。
「えちぜんく、…うわっ！？」
「やるじゃん、Aさん。」
ニヤリと笑った彼は、俺の手を片方掴んでぐいっと引っ張った。
体に力が入ってない俺は、そのまま越前君の胸へとダイブ。あああごめんね俺より背低いのに！！重いよね俺！！！
慌てて体制を戻そうとしたら、背中に手を回されて抱きつかれた。え、何してんの越前君。
「どんなからくりだったの？」
耳元で囁かれる。
変声期前の、ちょっと高くて綺麗な声。響いてもうるさくはないけど、鼓膜が大げさに振動してたまらない。
「その反応、やっぱり音？」
「ちょ、やめて、越前く、だめ」
越前君の手が、耳の裏を掠める。ざり、と言う音が響いて背中がぞくりと戦慄(わなな)く。
初めての感覚が、俺を襲う。
「ねぇ答えてよ。音聞いてたの？」
「ひっ…！そうだから、手、離せ…んんっ…！」
「そこまでじゃ。」
後ろから肩をぐいと引き寄せられて、越前君の手が俺から離れる。
「っ、は…にお、せんぱ…」
「試合は終わった。Aが勝った。それでええじゃろ。
…Aちゃん、ほれ耳栓。」
「す、みませ……」
俺は耳栓を取ろうとして手を伸ばすが手に力が入らずうまく掴めない。
そんな俺に先輩はため息をついて、触るぞと呟くと耳栓を付けてくれた。
俺に肩を貸してくれながら、仁王先輩は越前君の方をくるりと振り向いた。
「余計な詮索はいらんじゃろ。」
そう言った先輩の声は冷たかった。
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木こりのコロポ(プロフ) - 日吉和菓子２円さん» おかえりなさい！今夜はいっぱい更新するつもりなので、是非旅行疲れの一服にでもどうぞ！ (2018年4月13日 21時) (
レス) id: 43368e3037 (このIDを非表示/違反報告)
日吉和菓子２円 - 修学旅行から無事帰れました！沢山更新ありがとうございます！ (2018年4月13日 21時) (レス) id: 1e0ae13ebb (このIDを非表示/違反報告)
木こりのコロポ(プロフ) - ●RECさん» にふぇーどー！そうです新学期です…！忙しくなると更新速度が落ちるかも知れません、申し訳ない…！ (2018年4月11日 7時) (レス) id: 43368e3037 (このIDを非表示/違反報告)
●REC(プロフ) - 比嘉中でーじさいこうさぁー 新学期？新生活？頑張ってくださいね！ (2018年4月11日 0時) (レス) id: df969a8ec2 (このIDを非表示/違反報告)
日吉和菓子2円 - ありがとうございます！ 楽しみにしています！ (2018年4月10日 13時) (レス) id: 4bd1cfe4c2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：木こりのコロポ | 作成日時：2018年4月6日 21時
